「スマホ料金は安くしたいけれど、格安SIMに切り替えると通信品質が下がらないか不安」という方もいるでしょう。ドコモやau、ソフトバンクなどの大手キャリアと比べて、月額料金が圧倒的に安い格安SIM。
・安いのにはなにか裏があるのではないか
・大手キャリアと通信品質やサービス品質が全く変わらないということはあり得るのか?
と考えたことがある人もいるはずです。
そこでこの記事では、そもそも格安SIMがなぜ大手キャリアと比べて安い料金で契約できるのか、その仕組みと実際に契約する際に気をつけるべき落とし穴などを解説します。
格安SIMは「そもそもなぜ格安なのか」
まず前提として、格安SIMが「そもそも格安な主な理由」は以下の通りです。
・大手キャリアから回線を借りている
・サービス内容のシンプル化
これらの内容を武器にMVNOと呼ばれる格安SIMは人気を博しましたが、近年は「サービス内容のシンプル化」を大手キャリアも推し進めており、『ahamo』に代表される大手の格安プランとの差別化が曖昧になりつつあるのも事実です。
具体的にもう少し見ていきましょう。
大手キャリアから回線を借りている
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まず『mineo』などに代表される格安SIMを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)は、自社で通信設備を持たず、ドコモ、au、ソフトバンクといった大手キャリア(MNO)から通信回線を借りています。
基地局や通信インフラの設置・維持にかかる多額の費用を削減できるため、利用者に安価な料金プランを提供することができる。
そのためMVNOはしばしば大手キャリアに対して接続料の値下げ交渉を行っており、そうした取り組みは今も続いています。
サービス内容のシンプル化
格安SIM事業者の多くは、インターネットを中心に販売を行い、実店舗を持たないか、最小限に抑えています。
加えて格安SIMでは、キャリアメール(例:@docomo.ne.jp)や対面サポートなど、大手キャリアが提供する一部のサービスを省略しています。また、利用者が必要なオプションを選択して追加できる仕組みを採用しているため、不要なサービスにコストをかける必要がありません。
このようなシンプルなサービス設計で、料金の低価格化を実現しています。
格安SIMはやめとけ? 選ぶ際に知っておくべき3つの落とし穴
上記に述べた内容は「従来の格安SIMの強み」であることは事実ですが、2025年現在でも「強み」と言えるかは実は曖昧な部分もあります。
たとえば「インターネット中心の販売」「サービスのシンプル化」などの特徴は、大手キャリアにも反映され始めています。ドコモが提供する『ahamo』はその代表格と言えるプランの1つでしょう。
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格安SIMが脚光を浴びていた時代と比較して、昨今は「格安SIM」の強みや特徴は薄れつつあるとも言えるかもしれません。そこで本章では、あえて格安SIMの「デメリット」にも着目してみましょう。大手キャリアではなく、MVNOを選ぶことには3つの大きな落とし穴があります。
【1】MVNOの5Gは「高速とは限らない」
まず最大のデメリットはMVNOで提供される5Gは「高速とは限らない」ことです。
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まずMVNOは自社設備を持たないため、5G通信サービスもまた大手キャリアのインフラを借りて提供されています。そのため5G通信の速度は、キャリアとMVNOとの相互接続状況に大きく左右されます。
もう少し詳しく説明しましょう。本来5Gは、4Gよりも高度な通信技術が採用されており、極めて高速・大容量の通信が可能です。
一方で5Gの高速・大容量の通信をフルに活用するには、5G基地局自体が高速な通信を行うだけでなく、携帯電話網全体が5Gに対応する必要があります。
ここで浮かび上がるのが、大手キャリアとMVNOを相互接続する『POI』という接続インターフェースは5Gに対応しているのか、という点です。
結論から言えば、上記の『POI』は4Gのままというケースが極めて目立ちます。よってMVNOでは端末が4G通信をしても、5G通信をしても同じPOIを通過するため、POIが混雑していると通信は低速のままという状態が生まれます。
この問題は主に『POI』に起因するため、5Gでの高速な通信を実現したいならば、大手キャリアと契約した方がいい場合があります。総じて5Gのポテンシャルをフル活用し、高速な通信をしたいならば、MVNOを使う理由は小さくなります。
【2】「専用アプリ」「プレフィックス」の存在
格安SIMは通話品質が低いことも、しばしば指摘されます。格安SIMの通話音質が悪くなる主な理由は、「専用アプリ」や「オートプレフィックス」の利用が原因です。
格安SIMを利用しているユーザーは通話料金が安くなるという理由で「専用アプリ」を利用する人が多いのではないでしょうか。「専用アプリ」は、通話の際に特定の番号を付加することで、中継電話網を経由して通話を行います。中継電話網は、高音質に対応していない場合があり、音質が劣化する原因となります。
また、オートプレフィックスは、専用アプリを使用せずに、通常の通話でも自動的に特定の番号を付加する機能です。これも専用アプリと同様に、中継電話網を経由して通話を行うため、音質が劣化する可能性があります。
【3】海外ローミング
格安SIMを利用する場合「海外でも使えるか」という点にも要注意です。MVNOの格安SIMの場合、海外ローミングに対応していても、音声通話とSMSのみというものが大半で、サービスによっては海外データ通信不可な場合もあるため注意が必要です。
たとえばIIJmioは海外でのデータ通信は利用不可。mineoは、国際ローミング対応機種であれば音声通話・SMSのみ対応しています。OCN モバイル ONEは、申し込みをすれば月額利用料金は0円で利用できますが、通話と国際ローミングは従量課金制となります。
緊急時の連絡用という意味では有用と言えますが、音声やSMSの必要性があまりなくなっている現在、ローミングができなければ実質使えないのと同じと言えるかもしれません。モバイルルーターをレンタルするか、海外ローミングに対応しているキャリアに乗り換えるのがベターでしょう。
MVNOは将来にわたって「格安」であり続けることができるのか?
これまでに述べてきたようなデメリットが格安SIMに存在することは事実です。そうしたデメリットがあることを踏まえたうえで、なお格安SIMを使う場合、その最大の理由は「値段」でしょう。
とはいえ先にも述べた通り、大手キャリアの格安プランもじわじわと競争力を強めてもいます。そして、MVNOが将来に渡っても「格安」であり続けられるかは不透明な部分もあります。
大容量ニーズの高まりと接続料値上げのおそれ
「mineo」を展開しているオプテージと「IIJmio」を展開しているIIJの公開資料からは、データ通信量の増加傾向が共通して見て取れます。特に若年層においてその傾向が顕著です。しかしながら、大容量ニーズの高まりは、MVNOが得意とする小容量プランの需要を減少させ、中容量プランへの移行を促す可能性があります。
中容量プランは、大手キャリアも注力しており、競争が激化している領域です。そのため、MVNOが小容量プランではなく中容量プランに移行していく場合、苦戦を強いられる可能性も高いでしょう。
MVNO各社は接続料や音声卸料金の低減を求める動き
MVNOの強みは「自社設備を持たない」点ですが、この点は弱みでもあります。接続料や音声卸料金をキャリア側が値上げする恐れがあるためです。
そのためMVNO各社は、接続料や音声卸料金の低減を求める動きも強めています。
たとえば2021年、テレコムサービス協会MVNO委員会は、大手キャリアとMVNO間の競争条件の公平性を確保することを求めて、総務省に要望書を提出しています。要望書では、大手キャリアの格安料金プランは消費者にとって有益である一方、MVNOが対抗するには現行の接続料や卸料金では不利であると指摘しています。
MVNOと大手キャリアが公平に価格面で競争できる環境の担保は、消費者にとっても重要なポイントであり続けるでしょう。
一方で大手キャリアが格安料金プランをさらに強化し、なおかつMVNOに対しては値上げに踏み切った場合には、MVNOが不利になる局面も出てくるかもしれません。
2025年現在はどの格安SIMが「格安」なのか?
格安SIMが、将来に渡っても「格安」であり続けられるかは不透明な部分があります。しかし、2025年現在は格安SIMに競争力があり、大手にはないお得なプランがたくさん提供されていることも事実でしょう。
それでは、2025年現在はどの格安SIMが「格安」なのでしょうか?
結論から言えば、極めて少ないデータ通信で問題ない場合は、日本通信「合理的プランシンプル290」(※ドコモのネットワーク(LTE+3G)を利用)が候補となるでしょう。1GBまで月額290円で利用でき、データ容量が足りなくなっても、1GBごとに220円で追加可能です。データ使用量の上限を設定することで、データの使い過ぎを防止できます。さらに月額1,600円で完全かけ放題オプションを追加することも可能です。
※サムネイル画像(Image:Hadrian / Shutterstock.com)