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AppleによるMagSafeのゴリ押しとQi2との連携はポートレスiPhoneへの布石?

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スマートフォンを充電パッドに置くだけで充電してくれる「ワイヤレス充電」。見た目の格好良さもあり使っている人も多いでしょう。

一方、Appleが展開する「MagSafe」は、近年ワイヤレス充電規格「Qi2」とも連携を深めており、これは将来的に完全なポートレスiPhoneへの布石ではないかと注目されています。

なぜAppleは、世界標準の『Qi(チー)』があるのに、独自の『MagSafe』を強く推すようになったのでしょうか。

実はこの裏には、単なる技術の違いだけでなく、Appleの巧みなビジネス戦略と、ユーザー体験への深いこだわりが隠されています。詳しく見ていきましょう。

『Qi(チー)』と『MagSafe』は何が違う?

『Qi(チー)』はワイヤレス給電の国際規格で、さまざまなメーカーが採用することでスマートフォンや周辺機器への充電をケーブルレスで実現してきました。

一方のMagSafeは、Appleが独自に開発した磁力を利用するワイヤレス充電の仕組みです。

『Qi(チー)』と『MagSafe』は何が違う?1
(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

MagSafeはQiと互換性があり、磁力で充電器と機器を正確に位置決めできる便利さが特徴です。そのため、Qiは広く普及している一方で、MagSafeはApple製品固有の快適な充電体験を提供しており、両者はその技術的な違いと使い勝手から明確に区別されています。

Qiの誕生と普及

Qiの誕生と普及?1
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ワイヤレス充電の歴史は意外と古く、その技術自体は20世紀初頭から存在していました。しかし、スマートフォン向けに本格的な標準化が進んだのは2008年のこと。この年、業界団体のワイヤレス・パワー・コンソーシアム(WPC)が設立され、ワイヤレス充電規格「Qi」が誕生しました。

Qiの最大の目標は「相互運用性」。つまり、メーカーやブランドにもかかわらず、Qiロゴのあるデバイスと充電器であれば、どれでも使えるようにすることでした。このオープンな戦略は成功し、Androidスマートフォンを中心に多くのデバイスがQiを採用。Appleも2017年に発売したiPhone 8からついにQiに対応し、ワイヤレス充電が一気に普及するきっかけとなりました。

しかし、初期のQiには弱点もありました。充電器のコイルとデバイスのコイルが正確に重ならないと、充電効率が落ちたり、発熱したり、最悪の場合は充電が始まらなかったりする「位置合わせ」の問題です。多くのユーザーが、充電パッドの上で最適な場所を探してスマートフォンを微妙に動かす、という経験をしたことでしょう。

MagSafeの華麗なる復活

「MagSafe」という名前を古くからのAppleファンは聞き覚えがあるかもしれません。もともとは2006年にMacBookの充電コネクタとして登場した技術で、磁石でくっつき、ケーブルに足を引っかけても簡単に外れる構造で、本体の落下を防ぐ画期的な安全機能でした。

このMagSafeが、2020年のiPhone 12シリーズで、ワイヤレス充電技術として生まれ変わって再登場します。Appleの答えはシンプルでした。Qiの「位置合わせ」問題を、得意の磁石で解決したのです。

iPhone 12以降の本体内部には円形に磁石が配置されており、MagSafe充電器を近づけると「カチッ」という小気味よい音と共に完璧な位置に吸着します。これにより、位置ズレによる充電ロスがなくなり、安定して高効率な充電が可能になりました。その結果、AppleはiPhoneにおけるワイヤレス充電の最大出力を、標準的なQiの7.5Wから最大15Wへと引き上げることに成功したのです。

新規格「Qi2」について

2023年、WPCは次世代のワイヤレス充電規格「Qi2(チー・ツー)」を発表しました。しかし、このQi2の核心技術である磁力による位置合わせ機能「Magnetic Power Profile (MPP)」は、Appleが提供したMagSafeの技術をベースに開発されたものだったのです。

つまり、Qi2は「MagSafeのオープンスタンダード版」とも言える存在です。これにより、AppleのMFi認証を受けていないサードパーティ製品でも、Qi2認証を取得すればiPhoneを最大15Wで高速充電できるようになりました。

ここで1つの疑問が浮かびます。Appleが「Qi」ではなくMagSafeを推進していたにも関わらず、競争相手に塩を送るようにしてQiに技術提供を行った理由はそもそも何なのでしょうか。次の項目で詳しく見ていきましょう。

Appleによる「Qi2」への技術提供の狙いとは

Appleが自社独自で推進していたMagSafeを業界標準のQi2へと技術提供した背景には、単なる利便性向上以上の意図があると考えられます。Qi2への技術提供によって、Apple製品に限らず多様なデバイスでもマグネット式ワイヤレス充電が可能となり、市場全体のワイヤレス充電体験を底上げしつつ、将来的な新たな戦略への布石を打っています。

従来のAppleの「囲い込み戦略」について

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(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

そもそもAppleの最大の強みは、ハードウェア、ソフトウェア、サービスが緊密に連携した「エコシステム」です。iPhone、Mac、Apple Watch、AirPodsがシームレスにつながり、一度この快適な世界に足を踏み入れると、なかなか抜け出せなくなる――これを「ロックイン(囲い込み)効果」と呼びます。

MagSafeは、このエコシステムを物理的な世界にまで拡張する強力なツールです。充電器だけでなく、ケース、ウォレット(財布)、カースタンド、モバイルバッテリーなど、磁力でくっつく多種多様なアクセサリーが生まれ、なおかつそれらの製品が一貫したユーザー体験を提供し続けています。

前述の通り、従来のQi充電では、ユーザーは無意識のうちに「充電のスイートスポット」を探すという手間を強いられていました。MagSafeは、磁石の力でこの手間を完全になくし、「カチッ」とくっつけるだけで誰でも100%の性能を発揮できるようにしました。この「確実性」と「心地よさ」こそ、Appleが提供したいユーザー体験そのものなのです。

ユーザーがこれらの便利なMagSafeアクセサリーに投資すればするほど、Apple製品を使い続ける動機が強まり、Androidへの乗り換えをためらうようになります。

MagSafeの推進とQi2への技術提供は「ポートレスiPhone」への布石?

MagSafeを推進しつつ、Qi2への技術提供をすることは「MagSafeとQi2が一定の互換性を持つこと」を意味します。すると技術提供は、先に述べた「Appleのエコシステムの一貫性」を阻害する要因にも感じられます。

それでもAppleが技術提供をQi2に対して行ったことの裏には「ポートレスiPhone実現」に向けた中期ビジョンがあると推察されます。

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Appleはそもそも、EU規制(USB-C義務化)への対応としてLightning規格を手放さざるを得ませんでした。

しかし、すべての有線接続が廃止されれば、「有線充電ポート」に関するEU規制の適用外となります。その場合、中心となるのはワイヤレス充電です。将来的には、iPhoneからすべてのポートが取り除かれ、充電もデータ通信も完全にワイヤレス化される可能性があります。そしてそのタイミングで、Appleは「MagSafe」を核とした新たな認証プログラムを立ち上げ、かつてのLightningを中心としたエコシステムのような「囲い込み」を再構築する構想があると見られます。

そのための布石としてまずはQi2に技術提供を行いつつ、Appleは技術提供を通じて、業界標準の形成に影響力を持つことを狙っていると考えるのが妥当でしょう。自社技術をベースにした標準が広まることで、現時点では互換性の問題を解決し、ユーザーに価値提供を行うことでワイヤレス充電が受け入れられる土俵をさらに広げることができます。なおかつ、Appleはワイヤレス充電の技術主導権を確保できます。

ワイヤレス充電の規格としてQi2とMagSafeが互換性を持つ形で一気に普及することは、ポートレスiPhoneが市場に受け入れられるためのファーストステップと言えるのかもしれません。

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スマホライフPLUS編集部

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