2025年12月、「スマホソフトウェア競争促進法(通称:スマホ新法)」がついに全面施行のフェーズを迎えます。スマホ市場における米アップルと米グーグルによる「二強体制」にメスを入れる法律です。

ニュースでは「アプリストアの手数料が下がる」「他社のアプリストアが使えるようになる」といった話題が先行していますが、では、私たち一般ユーザーの生活はどう変わり、具体的に何をすべきなのでしょうか?
スマホ新法(スマホソフトウェア競争促進法)とは

これまでスマホ市場では、iPhoneならApp Store、AndroidならGoogle Playといったように、アプリの入手経路や決済手段、さらにはブラウザの根幹技術に至るまで、巨大テック企業が実質的に市場を支配していました。
そのため高いセキュリティや統一された操作性が保たれていた一方で、競争が阻害され、手数料が高止まりしているという批判が世界的に高まっていました。
日本の「スマホ新法」は、これら巨大プラットフォーマーに対し、競合他社の参入を妨げる行為を禁止し、公平な競争環境を作ることを目的としています。

たとえば売上の最大30%とも言われる「プラットフォーム税(手数料)」に苦しんできた日本のゲーム会社やアプリ事業者は少なくありません。
こうした事業者にとって、サイドローディング(App Store以外からのアプリダウンロード・インストールなど)やアプリ外課金の開放のメリットははかり知れません。独自の決済手段やストアを持つことで利益率を改善し、それを原資に新たなサービス開発を行うことが期待されます。
スマホ新法は「セキュリティリスク」の温床にもなり得る
もっとも市場が開放されたからといって「日本のアプリ事業者が、必ずしも巨大テック企業より優れているとは言い切れない」という点には注意が必要です。
アップルやグーグルが築き上げてきたUIやUXに対し、日本の事業者が提供する独自のアプリストアや決済システムが、それらと同等の使いやすさや安定性を最初から提供できる保証はありません。「使いにくい」「決済手順が面倒」といった不満が噴出する可能性は十分にあります。
さらに深刻な懸念点はセキュリティです。これまでは「App Storeにあるアプリなら、とりあえずウイルスなどの危険はないだろう」という一定の信頼(審査)がありました。
しかし、サイドローディング(公式ストア以外からのアプリインストール)や第三者ストアが解禁されることで、不正アプリの氾濫やフィッシング詐欺の増加といったリスクが高まる可能性があります。
つまりスマホ新法に伴う自由競争は魅力的ですが、それは同時に「ユーザー自身が安全性を見極める責任(自己責任)」が重くなることも意味しているのです。
スマホ新法施行で、ユーザーが意識すべきポイントは?
スマホ新法の施行に合わせて、iPhoneやAndroid端末のアップデート後、あるいはブラウザを開いた際に「デフォルトのブラウザや検索エンジンを選択する画面」が表示されるようになっています。
スマホ新法施行に伴い、たとえば追跡型広告をブロックする「Brave」などをデフォルトのブラウザに指定することが可能となります。
同様に検索エンジンのデフォルト設定を変更することも可能です。検索履歴を保存せずプライバシー保護に重点を置く「DuckDuckGo」をデフォルトに指定することも可能となります。
こうしたデフォルト設定の見直しが「スマホ新法」と向き合う、第一歩となるでしょう。
「アプリ外課金」とどう付き合うか冷静に判断する
次に直面するのが「お金」の問題です。「アプリから決済するより、Webから課金したほうが月額100円安い」といったケースが急増するのは確実です。
これまでは規約違反とされていた「Webサイトでの決済なら〇〇円お得です」という案内やリンク設置が自由化されるため、今後、基本無料アプリや有料アプリがアプリ外決済へとユーザーを誘導する場面が飛躍的に増えるでしょう。
もっとも全てのサービスで安さを求めてクレジットカード情報をあちこちに入力して回るのは、情報漏洩のリスクを高めるだけでなく、自分が何のサブスクリプションに入っているか把握できなくなる「サブスク迷子」の原因にもなります。
「よく知らない新しいアプリや、解約を忘れそうなものは、管理しやすいApp Store経由で払う」といったように、今後は、価格だけでなく安全性や管理のしやすさも考慮した「賢い使い分け」が求められるでしょう。
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