
毎日使っているAIチャットボット、海外旅行先で開けなかったら?
「調べものはChatGPT、要約はGemini、暇つぶしにGrok」──そんなふうに複数のAIチャットボットを日常的に使い分けている方も多いのではないでしょうか。しかし今、こうしたサービスが世界60以上の国・地域で利用制限や禁止の対象になっていることをご存じですか。
サイバーセキュリティ企業Surfsharkが2026年2月に公表した調査によると、主要AIチャットボット4種(ChatGPT、Gemini、Grok、DeepSeek)は、計13か国で政府による「特定サービスを対象とした禁止措置」を受けています。影響を受ける人口は世界全体の約40%。もはや他人事とは言えない規模です。
そして、最も多くの国から規制を受けているのが中国発のDeepSeekです。なぜDeepSeekだけが突出して”嫌われて”いるのか、そして私たちユーザーにどんな影響があるのかを整理します。
DeepSeekが「9か国以上」で規制される3つの理由
理由①:データの保存先が中国国内のサーバー
DeepSeekはチャット履歴を含む11種類のユーザーデータを収集し、そのデータを中華人民共和国内のサーバーに保存すると公表しています。問題は「いつまで保存するのか」が曖昧な点です。ChatGPTやGeminiが米国連邦法やEUのGDPR(一般データ保護規則)の枠組みで運営されているのに対し、DeepSeekにはこうした同等の法的監督が及びません。
Surfsharkの最高セキュリティ責任者トマス・スタムリス氏も「監督の欠如が、データ保護に関する懸念を一層強めている」と指摘しています。
理由②:AI Safety Indexでも低評価
DeepSeekは、AIの安全性を評価するAI Safety Indexにおいても最下位に近いスコアを記録しています。つまり、出力内容の正確性やバイアス管理、有害コンテンツへの対策といった面で、他の主要チャットボットに比べてリスクが高いと第三者機関からも評価されているわけです。
理由③:「全面禁止」と「政府端末のみ禁止」の二段構え
イタリアと韓国はDeepSeekの全国的な利用禁止に踏み切りました。一方、オーストラリア、台湾、カナダ、米国の一部の州などは「政府のシステムやデバイスでの使用禁止」にとどめています。共通するのは**「国家機密や行政データが中国に渡るリスクを許容できない」**という判断です。
他のチャットボットも安泰ではない──ChatGPT・Grok・Geminiの現状
ChatGPT:西側諸国で初めて一時ブロックされた”先例”
2023年3月、イタリアが違法なデータ収集と年齢確認の不備を理由にChatGPTを約1か月間禁止しました。この措置は西側諸国による初のAIチャットボット規制として大きな注目を集めました。現在も中国、ロシア、北朝鮮、イランなど40以上の国・地域でChatGPTは利用できません。
Gemini:禁止措置は回避、しかしEU参入に時間がかかった
Google Gemini(旧Bard)は直接的な禁止措置を受けていません。ただし、EU市場への展開はアイルランドのデータ保護委員会によるプライバシー審査をクリアするまで延期されました。現在は約240の国・地域で展開されていますが、中国やロシアなどでは依然として利用できません。
Grok:ディープフェイク問題で東南アジア3か国から排除
X(旧Twitter)と連携するGrokは、性的なディープフェイク画像を生成できる可能性が問題視され、インドネシア、マレーシア、フィリピンで禁止されました。さらにトルコがGrokの一部コンテンツを公式に検閲した最初の国となっています。X自体が78回もの制限措置を世界で受けていることを考えると、今後Grokのアクセスが制限される地域はさらに増える可能性があります。
規制は「始まりの始まり」にすぎない
スタムリス氏の「AIチャットボットに対する規制はまだ始まったばかり」という言葉は、ユーザーとして重く受け止めるべきでしょう。
注目すべきは、規制の理由が大きく2つのパターンに分かれている点です。一つはデータセキュリティ。ユーザーの入力情報がどこに保存され、誰がアクセスできるのかという純粋な技術・法律の問題です。もう一つは地政学的な動機。独裁国家で米国製チャットボットが軒並み使えない事実は、AI規制が情報統制の一環として機能していることを示しています。
私たち一般ユーザーにとっての実務的なリスクは、「海外出張や旅行中に普段使いのAIが突然使えなくなる」「お気に入りのサービスが日本でも規制対象になる可能性がゼロではない」という2点に集約されます。
今日からできる3つのアクション
1. 機密情報の入力を見直す:
どのチャットボットを使うにせよ、個人情報や業務上の機密データを安易に入力しない習慣をつけましょう。
2. 複数サービスを使える状態にしておく:
一つのサービスに依存すると、突然の規制変更で業務フローが止まります。ChatGPT、Gemini、Claudeなど複数の選択肢を確保しておくのが賢明です。
3. プライバシーポリシーを一度は読む:
面倒でも、データの収集範囲と保存先くらいは確認しておくべきです。DeepSeekの件が示すように、「無料で高性能」の裏にはコストが潜んでいることがあります。
世界で進むAI規制の波は、サービスの良し悪しだけでなく「データがどこに流れるか」という国家レベルの問題と直結しています。便利だからこそ、自分のデータの行き先に少しだけ敏感になっておきたいところです。
出典:【Surfshark B.V.】
※サムネイル画像はスマホライフPLUS編集部が作成しています。


