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メタバースは廃れた?VR/ARが流行りそうでなかなか流行らない理由

数年前には未来のインターネットの姿として熱狂的に語られた「メタバース」。しかし、一時期の喧騒が過ぎ去った今、「メタバースは終わったのではないか?」という声も聞かれるようになりました。

メタバースは廃れた?VR/ARが流行りそうでなかなか流行らない理由の画像1
(Image:Shutterstock.com)
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VRヘッドセットを装着して仮想空間を冒険したり、ARグラスを通して現実世界にデジタル情報を重ね合わせたりする未来は、まだ一部の先進的なユーザーや特定の業務用途に限られているのが現状です。なぜ、これらの技術は私たちの日常に爆発的に普及するには至っていないのでしょうか?

流行りそうで、やっぱり流行らない「メタバース」の現状を詳しく見ていきましょう。

そもそもメタバースとは何か

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(画像は「photoAC」より)

メタバースの定義はさまざまですが、一般的には「インターネット上に構築された三次元の仮想空間であり、ユーザーはアバター(自身の分身となるキャラクター)を通じてその空間内で活動し、他者と交流する環境」と理解されています。

たとえば2024年の矢野経済研究所による「メタバースの国内市場動向調査」では、メタバースを「仮想と現実を融合したインターネット上に構築された三次元空間で、ユーザー同士が自分のアバターを操作して交流したり、さまざまなサービスやコンテンツが利用できる環境」と定義しています。

そもそもメタバースとは何か2
(画像は「フォートナイト」公式サイトより引用)

重要なのは、「メタバース」が単一のサービスやプラットフォームを指すのではなく、そのような環境を実現する概念や技術の総称であるという点です。狭義には専用のVRヘッドセットを必要とする没入型の仮想空間を指すこともありますが、基本的には「Fortnite」や「Roblox」のように、PCやスマートフォンからアクセスでき、アバターを介して他者と交流したり、独自のコンテンツを作ったり体験できるプラットフォームもメタバース的な体験を提供していると言えます。

国内におけるメタバースの市場規模はどれくらい?

国内におけるメタバースの市場規模はどれくらい?1
(画像は「令和5年版 情報通信白書」より引用)

総務省が公表した「令和5年版 情報通信白書」によると、世界のメタバース市場(インフラ、ハードウェア、ソフトウェア、サービスの合計)は、2022年の8兆6,144億円から、2030年には123兆9,738億円まで拡大すると予想されています。

一方、日本国内の市場に目を向けると、同白書では2022年度に1,825億円(前年度比145.3%増)、2026年度には1兆42億円まで伸びると予測されています。

この予想に基づくと、2022年度から2026年度の間にメタバース市場は5倍以上に膨らむと想定ですが、端的に言って「そこまで流行っているものとは思えない」と感じる方の方が多いのではないでしょうか。その最も大きな理由は、認知度に対する利用者数の少なさにあるといえるでしょう。

メタバースの認知度に対してVRなどの利用経験がある人はごく一部

日本国内におけるメタバースの認知度は非常に高い水準にあります。先ほどもご紹介した「令和5年版 情報通信白書」によると、日本の「メタバース」の認知度は、62.7%。

一方、実際の利用経験者はまだ限定的です。同白書では「使っている・使ったことがある」はわずか2.8%。「使ってみたい」は14.3%で、「使ったことがなく、興味もない」と「よく分からない」は合わせて82.9%となっています。

メタバースの認知度に対してVRなどの利用経験がある人はごく一部1
(画像はスマホライフPLUS編集部撮影)

たとえば筆者自身も2021年3月、ちょうどコロナ禍でどこにも行けない時期にMeta Quest 2(当時Oculus Quest 2)を購入。「バイオハザード4」や「ARIZONA SUNSHINE」など、没入感の高いゾンビゲームで遊んだり、メタバース空間にワークスペースも構築し、バーチャル空間で仕事をしていたこともありましたが、筆者の周りにVRコンテンツやメタバースで遊んだ経験があるという人はいませんでした。

認知度は高く、デバイスの価格も大きく下がっており、スタンドアロンで使える端末が増えたにもかかわらず、一般の消費者に全くと言っていいほど浸透していないのが「メタバース」であり「VR/AR」と言えるのかもしれません。

広義のメタバースプラットフォームの動向

先ほど筆者はメタバースの利用経験者の割合の低さについて、VRデバイスを引き合いに出しながら解説しましたが、厳密にはメタバース=VRではありません(※VRはメタバースの一つに相当します)。自身のアバターで仮想空間でコミュニケーションできるプラットフォームも広義のメタバースに該当します。

そうしたプラットフォームの代表格には、FortniteとRobloxが挙げられます。これらのプラットフォームは、ゲームとしての側面が強いものの、ユーザーがアバターを通じて交流し、独自のコンテンツを創造・共有できる点でメタバース的な要素を色濃く持っています。

Fortnite

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(画像は「フォートナイト」公式サイトより引用)

Epic Gamesが運営するFortnite(フォートナイト)は、2023年には登録ユーザー数が5億人を超え、月間アクティブユーザー数(MAU)は1億人を超えるなど、巨大なユーザーベースを誇ります。ユーザー層は18~24歳が多数と見られ、実際にはより低年齢層も多くプレイしていると推測されています。なお、国内のユーザー数は500万人以上とされています(※日本国内のMAU)。

当初はバトルロイヤルゲームとして人気を博しましたが、近年ではUEFN(Unreal Editor for Fortnite)の登場により、ユーザーがUnreal Engineの機能を使って高品質なオリジナルゲームや体験を制作・公開できるようになり、メタバースプラットフォームとしての進化を加速させています。

Roblox

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(画像は「Roblox」公式サイトより引用)

Robloxは、ユーザー自身がゲームを作成し、他のユーザーと共有できるオンラインゲーミングプラットフォームです。世界の月間アクティブユーザー数(MAU)は3億8,000万人を超え、デイリーアクティブユーザー(DAU)も約8,000万人規模に達しているとも言われています。低年齢層での人気拡大が顕著であり、スマートフォンやPCから無料でアクセスできる手軽さも普及を後押ししており、教育分野や企業のプロモーション活動など、ゲーム以外の活用事例も増えています。

『FF14』はメタバースの先駆け?

こうした「仮想空間でアバターを操作し、コミュニケーションする」というプラットフォームについて、一部では「MMORPGと何が違うのか」という疑問が呈されるケースがよくあります。

たとえばMMORPGの代表格である「ファイナルファンタジーXIV(FF14)」はユーザー数が3,000万人を突破。ハウジングやクラフト、ミニゲームなど、多岐にわたるコンテンツが用意されており、FF14はしばしばメタバースの先駆けとみなされることがあります。

いずれにしても『FF14』『Fortnite』など多くの方にとってなじみ深いプラットフォームも「広義のメタバースである」ととらえた場合、本当の意味で流行っていないのは「メタバース」ではなく「VR/AR」なのかもしれません。

成長が見込みにくいAR/VRデバイス産業

日本国内のVR/ARヘッドセット市場は、世界市場と比較して厳しい状況に直面しています。たとえばIDC Japanは2024年の調査で、国内のAR/VRヘッドセット市場は2029年までに約38万台と、大幅な成長は見込みにくい状況を示しています。

この「38万台」という台数は、「市場規模」とみなすにはあまりに小さな台数であることが否めません。

成長が見込みづらいAR/VRデバイス産業1
(画像は「任天堂」公式サイトより引用)

たとえばNintendo Switch 2の出荷台数は発売後4日間で350万台越え。VR/ARか否かという差こそあれど、メーカーにとっては3DCGをフルに活かしたコンテンツやプラットフォームを作るならばコンシューマー向けゲーム機やPC向けにリリースする方が遥かに良いでしょう。メタバースへの取り組みは優先度が低くなりがちだとも言えます。

PSVRも低迷か

PSVRも低迷か1
(画像はスマホライフPLUS編集部撮影)

実は筆者、Meta Quest 2だけではなく「PS VR2」も所持していますが、こちらも周囲には誰も持っている人がいません。

そもそも「PSVR」はソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が提供するPlayStation連携のVRシステムで、初代は2019年までに500万台の販売を達成しましたが、その後は低迷。対応コンテンツの不足などが指摘されました。

「PS VR2」はリリースから6週間で約60万台を売り上げ、初代を上回るスタートとも言われましたが、2024年には在庫が積み重なり、生産を一時中断せざるを得ない状況になったとも報じられました。

VR/ARが流行りそうでなかなか流行らない理由

VRやARがいつまでも「流行りそう」で実際に流行らない理由に、デバイスの価格や、日本の住環境との相性の悪さ、コンテンツ不足などが挙げられます。

価格と性能のバランスの難しさ

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(画像は「Apple」公式サイトより引用)

VR/AR体験の質はデバイスの性能に大きく左右されますが、高性能なデバイスは依然として高価です。例えば、Apple Vision Proは約60万円と、一般の個人ユーザーが気軽に手を出せる価格ではありません。

一方で、安価なデバイスは画質が粗かったり、処理能力が低いために動きがカクついたり、体験できるコンテンツが限られていたりと、没入感を損なう要因を抱えています。そしてVR/ARは体験して「退屈」ないしは「VR酔いが激しい」とひとたび感じてしまうと、2回目以降の体験への心理的ハードルが大きく上がりやすいコンテンツです。

もしかしたら高品質なVRは「家庭で楽しむもの」ではなく、ゲームセンターやレジャー施設で楽しむのに適したコンテンツとして発展の余地があるかもしれません。

日本の住空間とVRシステムの相性の悪さ

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(画像は「photoAC」より)

特にルームスケールVR(部屋の中を動き回るVR体験)を楽しむためには、ある程度の広さの物理的なスペースが必要となります。しかし、日本の一般的な住宅事情を考えると、安全に動き回れる十分なスペースを確保することが難しい家庭も少なくありません。

キラーコンテンツ不足

日常生活の中でVR/ARデバイスを「いつ、どこで、何のために使うのか」という具体的なメリットや必要性がはっきりしている人はまだ少ないでしょう。「VRゴーグルをわざわざ装着してまでやりたいこと」が、ゲームや一部のエンタメ体験以外に見出しにくいのが現状です。

そしてゲームや一部のエンタメ体験そのものも、VR/ARデバイスの出荷台数の少なさが遠因となり、従来のPS5やNintendo Switch向けの「通常のゲーム」に比べて充実しているとは必ずしも言えないでしょう。

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(画像は「Meta」公式サイトより引用)

ちなみに、筆者もMeta Quest 2では基本的に「バイオハザード4」しか長続きせず。ちなみに「PS VR2」では「バイオハザード ヴィレッジ」と「バイオハザード RE:4 VRモード」をプレイしています。要はVRを遊ぶ動機は、筆者自身も「好きなIPがあるから」でしかなく、VRという体験そのものを本当に欲することができているかは微妙な面もあります。

メタバース空間で過ごす動機付けの難しさ

メタバースやVR/AR空間が「没入する先」であり、「コミュニケーションを取る場所」でもあるならば、その没入や交流に対しての報酬が欲しいと感じる方も少なくないでしょう。

2Dのゲームやエンタメと異なり、3Dの空間に没入するのはプレイヤー側に強い能動性や負担を強いる行為であるためです。

そして多くのVR/ARコンテンツには「初体験時の感動」は間違いなくあるものの「継続的プレイする報酬系」はありません。

かつて「セカンドライフ」が注目された理由の一つに、仮想空間内での経済活動の可能性がありましたが、現状の多くのメタバースプラットフォームでは、個人ユーザーが容易に収益を得られるような経済圏が確立されているとは言えません。一部のゲーム内アイテムの売買や、FortniteのUEFNのようなクリエイター支援プログラムを通じて収益を得る道も開かれつつありますが、まだ限定的です。

すると少ない労力で気軽にできるスマホゲームなどの方が良い、と感じてしまう方が多いのは無理もないことでしょう。

VR/ARが「日常」になるための条件とは?

結論として、「流行りそうでなかなか流行らない」VR/AR技術の現状の課題は根深く、スマートフォンが普及したようなスピードでの「日常化」はまだ先と考えられます。しかし、技術的課題の克服と社会受容性の向上が進めば、特定の用途から徐々に生活に浸透していく可能性は十分にあります。

まずは「これがないと生活が不便」「この体験のためならデバイスを購入する価値がある」と多くの人に思わせるような、ゲーム以外の実用的で魅力的なアプリケーションやコンテンツの創出が求められます。そして、そうしたキラーコンテンツにおいて異なるプラットフォームやデバイス間での体験の連携(インターオペラビリティ)が提供されることも重要です。

特定のデバイスに縛られる体験ではなく、デバイス側に劇的な進化が起きたうえで、複数デバイス間でリッチなメタバース体験が連携されるようになると「日常と仮想空間の融合」が進むでしょう。メタバースが目指す先に日常と仮想空間の融合があるとした場合、現行のヘッドセットなどはまだまだ力不足の存在なのかもしれません。

※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)

スマホライフPLUS編集部

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