「最近、パソコンの空き容量が減った気がする」——そんな違和感を覚えたChromeユーザーは、ぜひ一度パソコンの中身を確認してみてください。知らないうちに、4GBもの巨大なAIモデルがダウンロードされているかもしれません。
米テックメディアCNETの報道によると、Google Chromeが一部のユーザーのパソコンに「Gemini Nano」と呼ばれるAIモデルを、許可なく自動ダウンロードしていたことが明らかになりました。しかもユーザーには一切通知されません。

勝手にダウンロードされる「Gemini Nano」とは何か
Gemini Nanoは、Googleが開発したAIモデルの中でも、スマートフォンやノートPCなど端末上で直接動作するタイプのものです。クラウド(Googleのサーバー)ではなく、あなたのパソコンの中で処理が完結します。
主な機能としては、詐欺電話の検知、テキストメッセージの作成支援、録音の要約、Pixelスマートフォンのスクリーンショット解析などが挙げられています。なお、Chrome上でこのモデルが担う機能は、文章作成支援(Help me write)、詐欺サイト・詐欺メッセージの検知、ページ要約、タブグループの提案などです。補完情報によると、Chrome 149からは英語、スペイン語、日本語、ドイツ語、フランス語の入出力に対応しているとのことです。
ここで注意したいのが、Chromeのアドレスバーに表示される「AI Mode」ボタンとの違いです。AI Modeで検索するとGoogleのクラウドサーバーに接続されますが、Gemini Nanoはあくまでパソコン内部で動きます。つまり、AI Modeを使っていなくても、Gemini Nanoが裏側に入っている可能性があるのです。
なぜGoogleは黙ってインストールしたのか
スウェーデンのコンピュータ科学者で弁護士でもあるAlexander Hanff氏(通称「That Privacy Guy」)は、CNETの取材に対し次のように指摘しています。
「ユーザー自身のハードウェアで推論処理を実行すれば、Googleは計算コストをかけずに『AI機能』を提供できる」
AIの「推論(inference)」とは、学習済みのモデルが実際にタスクを処理する工程のことです。通常これはGoogleのデータセンターで行われますが、その処理をユーザーのパソコンに肩代わりさせれば、Googleはサーバーコストを削減できます。一方でユーザー側には、パソコンの動作速度の低下やバッテリー消費の増加、そして4GBものストレージ圧迫というデメリットが生じ得ます。
Hanff氏はさらに踏み込んだ見解を示しています。
「Googleは過去20年にわたり、世界規模でプライバシー侵害を繰り返してきた。許可を求めれば(法律が求めているように)、このモデルの普及が妨げられると判断したのだろう」
同氏は、この無断インストールがEUの一般データ保護規則(GDPR)における「合法性・公正性・透明性」の原則に違反する可能性があるとも指摘しています。なお現時点では、こうした規制対応のためか、EU圏のユーザーへの配信は見送られているとされ、日本を含むその他の地域が対象となっています。
一方、Googleの広報担当者はCNETに対し、「2月から、ユーザーがChromeの設定で簡単にモデルをオフにして削除できる機能の提供を開始した。無効にすれば、モデルのダウンロードやアップデートは行われなくなる」とコメント。また、端末の処理能力やメモリ、ストレージ、ネットワーク帯域が不足している場合は自動的にアンインストールされるとしています。
あなたのパソコンに入っているか確認する方法
Hanff氏が指摘するように、「Chromeはユーザーに確認を求めず、通知も表示しない」ため、自分で探さない限りGemini Nanoの存在に気づくことはありません。以下の手順で確認できます。
なお、最も手軽な確認方法は、アドレスバーに chrome://on-device-internals と入力し、「Model Status」タブでモデルのバージョン・インストール先・フォルダサイズを確認する方法です。あわせて、以下のファイル確認も有効です。
Windowsの場合
方法1:「ファイル名を指定して実行」で確認 Windowsキー+Rキーを同時に押す 表示された入力欄に %LOCALAPPDATA%\Google\Chrome\User Data\OptGuideOnDeviceModel を貼り付けてEnter フォルダが開き、中に「weights.bin」というファイルがあればインストール済み
方法2:エクスプローラーで確認 エクスプローラーを開く C:\Users[ユーザー名]\AppData\Local\Google\Chrome\User Data\OptGuideOnDeviceModel に移動 「weights.bin」の有無を確認
Macの場合 Finderを開く(Dock左端の青いスマイルアイコン) メニューバーの「移動」をクリックし、Optionキーを押しながら「ライブラリ」を選択 Application Support > Google > Chrome > Default に移動 「OptGuideOnDeviceModel」フォルダ内に「weights.bin」があればインストール済み
Gemini Nanoを完全に削除する手順
Windowsでの削除手順 Chromeを開き、設定 > システムから「オンデバイスAI」をオフにする アドレスバーに chrome://flags と入力し、「Optimization Guide」を検索。「Enables Optimization Guide On Device」を「Disabled」に設定。あわせて「Prompt API」を検索し、「Prompt API for Gemini Nano」も「Disabled」にしておくと、より確実に再ダウンロードを防げます Chromeを完全に終了する(×ボタンではなく、メニューから「終了」を選択) エクスプローラーで \AppData\Local\Google\Chrome\User Data に移動し、OptGuideOnDeviceModelフォルダを削除
Macでの削除手順 Chromeを開き、右上の三点メニュー > 設定 > システムから「オンデバイスAI」をオフにする Chromeを完全に終了したうえで、Finderで Application Support > Google > Chrome > Default に移動し、OptGuideOnDeviceModelフォルダをゴミ箱へ移動して空にする
なお、最も確実にGemini Nanoを除去する方法はChrome自体をアンインストールすることだとHanff氏は述べています。
知っておきたいハードウェア要件と自動削除の仕組み
Gemini Nanoは、端末がハードウェア要件を満たしている場合にのみインストールされます。補完情報によると、その要件はWindows 10/11またはmacOS 13以降で、GPUを使用する場合はVRAM 4GB超、CPUを使用する場合はRAM 16GB以上かつ4コア以上、さらに22GB以上の空きディスク容量が必要とされています。
また、空きストレージが10GB未満になるとweights.binファイルが自動削除される仕組みがあるとの情報もあります(要件を30日連続で満たさない場合も削除されるとされています)。ただし、この「自動削除」に頼るのではなく、不要であれば自分の手で確実に削除しておくのが安心です。
今すぐやるべき3つのこと
Chrome利用者であれば、以下の手順を今日中に済ませておくことをおすすめします。
まず確認——上記の手順でOptGuideOnDeviceModelフォルダとweights.binファイルの有無をチェック 不要なら削除——Chromeの設定でオンデバイスAIをオフにし、フォルダを手動で削除 今後の自動ダウンロードを防止——設定を無効にしておけば、今後モデルが再ダウンロードされることはないとGoogleは説明しています
4GBという容量は、スマホで撮影した写真で約1,000〜2,000枚分に相当します。「知らないうちに入っていた」では済まされないサイズです。Googleがユーザーの同意なくこうしたファイルを配布する姿勢には、プライバシーの観点から引き続き注視が必要でしょう。
出典:CNET
参考:That Privacy Guy、Chrome for Developers(Google公式)、Android Authority、Gadget Hacks、Malwarebytes、gHacks


