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AI分析、8割が導入済み。なのに現場が「楽にならない」のはなぜ?

「AIを入れたのに、結局現場の手間は減っていない」―そんな声が、企業の電話対応の現場から聞こえてきます。

株式会社シンカが、通話録音を行っている企業の管理職・責任者1,019名を対象に実施した「企業における通話録音データの管理とAI活用実態」に関する調査によると、顧客との電話対応を録音している企業の8割以上がAIを活用していると回答しました。内訳は「積極的に活用している」が37.9%、「一部で活用している」が45.4%です。

数字だけ見れば、AI導入は十分に進んでいるように思えます。しかし調査では、現場で「内容の把握に時間がかかる」といった課題が根強く残っていることも明らかになりました。AIを使っているかどうかが、そのまま実務の効率化に直結していない「活用格差」が浮き彫りになったのです。

その背景には、コンプライアンス(法令や社内規則の遵守)の強化やカスタマーハラスメント対策を理由に「全通話録音」が当たり前になった一方で、蓄積された膨大な音声データが活用されないまま「ブラックボックス化」しているケースがあると、調査は指摘しています。

つまり、録音データは増え続けているのに、必要な情報にたどり着けない。AIという道具はあっても、それだけでは現場の負担が軽くならない構図が見えてきます。この記事では、調査結果をもとに「活用格差」が生まれる理由と、今後どのような視点で見直しを考えればよいかを整理していきます。

 

AI分析、8割が導入済み。なのに現場が「楽にならない」のはなぜ?の画像1
(画像はShutterstockから引用)

 

AIは通話の「自動要約」や「テキスト化」で活躍──では何が足りない?

では、AIは実際にどんな場面で使われているのでしょうか。調査でAIを活用していると答えた企業に「どのように使っているか」を尋ねたところ、上位の用途は次のとおりでした。

長時間の通話を自動要約して把握(41.1%)―最も多い回答です。長い電話の内容をAIが短くまとめてくれる機能への期待がうかがえます。

通話内容をテキスト化して目視確認(36.5%)―音声を文字に変換し、目で読んで確認する使い方です。

感情の起伏からクレーム・カスハラ判定(35.1%)―カスハラとは「カスタマーハラスメント」、つまり顧客からの過度な要求や暴言のこと。声のトーンなどからAIが判定する機能を指します。

これらの結果から、要約や可視化による効率的な内容把握に加え、顧客の感情を客観的に分析して応対管理に役立てたいという意向がうかがえます。

企業が求めているのは、大きく分けて「録音を聞き直す手間を減らすこと」と「トラブルの芽を早く見つけること」の2つに集約されるでしょう。ただし、こうした機能を導入しても現場の負担が思うように減っていない実態があります。次のセクションでは、その理由を数字で確認していきます。

 

AI導入企業でも録音データの検索に「5分前後」かかる実態

「AIを入れたのに、結局データを探す手間は減っていない」―そんな現場の声を裏付ける数字が、今回の調査で示されています。

AIを活用している企業であっても、過去の録音から特定のデータを探し出し、内容を確認するまでに1件あたり一定の時間がかかっていることがわかりました。具体的な内訳は次のとおりです。

1分〜5分未満:31.4%
5分〜10分未満:41.8%
10分〜30分未満:12.0%

もっとも多いのは「5分〜10分未満」で、全体の4割超を占めています。「5分前後」がボリュームゾーン(回答が集中する帯域)となっており、目的の音声を探す作業に一定の時間がかかっている状況です。

「たった数分」と感じるかもしれません。しかし、電話対応が日常的に発生する職場では、この数分が毎日・毎件積み重なります。調査でも、組織全体で見れば業務時間のロスにつながるだけでなく、顧客へのレスポンス遅延など対応品質の低下を招く可能性があると指摘されています。

AIを導入しているのに検索だけで時間を取られてしまう―この実態は、ツールを入れただけでは業務効率化に直結しないことを数字で示しているといえるでしょう。

 

データが多すぎて探せない?「クラウド保存」だけでは不十分な理由

AIを導入しているのに、なぜ目的の録音データがすぐに見つからないのでしょうか。その根本には「データの量」と「保管のしかた」という2つの問題があります。

今回の調査では、対象企業の約8割(83.0%)が「全ての通話を録音している」と回答しました。毎日の電話がすべて音声ファイルとして蓄積され続けている状態です。

では、その膨大なデータはどこに保管されているのでしょうか。管理方法の調査結果は次のとおりです。

クラウドサービス(SaaS)…49.9% 社内サーバー/オンプレミス(社内に設置した自社管理のサーバー)…45.7%

クラウドサービスが最も多い一方で、調査では「単にクラウド上へ音声ファイルを蓄積しているだけでは、必要なデータへの検索性は担保されない」と指摘されています。

つまり、保存場所をクラウドに移しただけでは「探しやすさ」は変わらないということです。録音ファイルが増え続ける中で、聞きたい通話にたどり着けなければ、AIによる要約や分析の機能があっても活かしきれません。

調査では、音声をただ「貯める」のではなく、目的のデータへ素早くアクセスできるシステム環境をあわせて整える必要があるとされています。「AIを入れたのに効率が上がらない」と感じている場合、まず見直すべきはAIの性能ではなく、データの貯め方そのものかもしれません。

 

現場が抱える3つの課題と、9割が求める「一気通貫」の解決策

AIを導入しても効率化が進まない背景には、現場が日々直面している具体的な壁があります。調査で「通話録音データをより業務に活用する上でのハードル」を尋ねたところ、上位に挙がったのは次の3つでした。

「必要な音声を探しづらい」(31.6%)―最も多い回答です。膨大な録音の中から目的の1件にたどり着けない状態が続いています。

「テキスト化されておらず目視確認できない」(28.6%)―音声のままでは内容を一覧で比較できず、確認作業が属人的になりがちです。

「内容把握に時間がかかる」(28.2%)―検索性(必要なデータへすぐアクセスできるかどうか)や一覧性が不十分なため、1件ごとの確認に手間がかかっています。

いくら自動要約や感情分析といった機能があっても、その土台となるデータの検索性や一覧性が整っていなければ、蓄積された情報を実務に十分活かすことは難しい―調査結果はそうした実態を浮かび上がらせています。

こうした課題を踏まえ、今後のAI活用強化の必要性について尋ねた結果も注目に値します。「強く感じる」(36.9%)と「ある程度感じる」(55.4%)を合わせて約9割が必要性を感じていると回答しました。

調査では、今後は録音から検索、テキスト化、分析までを一気通貫で行える環境の整備が不可欠とされています。単にAI機能を追加するだけでなく、「音声を貯める」段階から「すぐに探せて中身を把握できる」段階へ仕組みそのものを見直すことが、活用格差を埋める鍵になりそうです。

 

まとめ:通話録音データを本当に活用するために、まず何を確認すべきか

今回の調査で明らかになったのは、AI導入が進む一方で「データの肥大化」「検索性の低さ」「テキスト化の未整備」という3つの壁が「活用格差」を生んでいるという現実です。

1件の音声を確認するのに5分前後かかる状況は、件数が積み重なるほど大きな業務負担になります。「AIを入れたのに、なぜ楽にならないのか」と感じている職場は少なくないはずです。

約9割の企業がAI活用の強化を求めているという結果からも、音声をただ蓄積する状態から脱却し、目的のデータへ素早くアクセスできる仕組みの構築が重要といえます。

自社の録音データが「貯まっているだけ」になっていないか 必要な通話を探すのに、現場がどれだけ時間を費やしているか

まずはこの2点を職場で振り返ることが、活用格差を埋める第一歩になるのではないでしょうか。

 

 

スマホライフPLUS編集部

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