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意外と知らない『MySpace』日本版がmixiを上回れずに日本撤退した理由

00年代に人気を博したSNS『MySpace』。2003年にアメリカでサービス開始後、U2やマドンナといったアーティストが『MySpace』に登録していたことから音楽ファンを中心に盛り上がり、2006年にはソフトバンクグループの出資を受けて日本にも進出しました。

しかし『MySpace』日本版は2006年以降、『mixi』『モバゲータウン』『GREE』といった日本国内のSNSを上回れずに、最終的には日本撤退が決定しました。

2006年時点で海外の主要SNSが日本進出するのは、いち早くITトレンドをつかんだ貴重な動きだったと言えるはずです。では「主要な海外サービス」が日本では成功をつかむことができなかった要因は何なのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

『MySpace』日本版はそもそもどのような経緯で日本に進出したのか

先述した通り、MySpaceは2006年にソフトバンクとの合弁で日本市場に進出。具体的にはNews Corp.グループとソフトバンクが折半出資する形での日本進出でした。

当時、MySpaceは世界的に成功を収めていたSNSプラットフォームで、特に音楽アーティストとの連携が強みでした。たとえば2006年当時、海外ではU2やマドンナ、ビヨンセといったアーティストがMySpaceに参加していました。

『MySpace』日本版がそもそも日本進出した背景1
(画像は「Wayback Machine(2007年当時のMySpace日本版)」より引用)
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『MySpace』は、日本市場でも音楽に重点を置いた戦略を展開しました。

アーティストのユーザー登録を促しつつ、mixiをはじめとする国内のSNSが当時実現できていなかった高度なマルチメディア機能やプロフィールのカスタマイズ機能などを打ち出していく戦略を掲げていました。

そして国内でも『MySpace』日本版をきっかけにブレイクしたアーティストは、00年代当時に少なからず存在しました。たとえば、歌手のたむらぱんさんはその一人として有名です。

『MySpace』日本版がそもそも日本進出した背景2
(画像は「日本コロムビア」公式サイトより引用)

2007年にMySpaceで活動を開始したたむらぱんさんは、日本人シンガーソングライターとして初めてMySpace日本版で楽曲を発表しました。その後、2007年10月にメジャーデビュー。つまり、MySpaceでの成功がメジャーデビューへのきっかけとなったと言えるでしょう。

『MySpace』日本版の魅力とは何だったのか?

日本ではたむらぱんさんのブレイクのきっかけとなった『MySpace』。00年代時点での『MySpace』日本版とはどんな点に魅力があるサービスだったのか、見ていきましょう。

なお、以下で紹介する「魅力」が「数字」に繋がるものだったかといえば、見解が分かれる点でしょう。『MySpace』日本版がSNSとして国内で成功を収めたかというと、微妙なところ。実際、2010年9月には『MySpace』日本版はモバイルサービスを終了しており、2011年末に正式に撤退しています。運営そのものは米MySpaceに引き継がれたものの、一時期のようなMySpaceへの熱は国内では冷え込んでしまったといえます。

『MySpace』日本版の魅力とは何だったのか?1
(画像は「Wayback Machine(2009年当時のMySpace日本版)」より引用)

SNS機能について

『MySpace』の魅力には、大きく分けて「音楽機能」と「SNS機能」が挙げられます。

MySpaceはまず通常のSNSと同様に、ユーザーは自分のプロフィールを公開可能です。そしてMySpaceの特徴であるマルチメディア機能を活かして、音楽や動画を自分のプロフィール画面で再生可能であり、デザインのカスタマイズも可能でした。

今日のSNSと大きく違う点としては、「フィード」に相当する機能がないことです。つまり、今日のXやInstagramのように自分のフィードにおすすめポストや広告が溢れかえることはありません。

基本的には気に入ったコミュニティに参加するか、自分のプロフィールページに何かが書き込まれるのを待つといったコミュニケーションが中心で「荒れづらいSNS」という側面がありました。

音楽機能について

『MySpace』にはアーティストが音楽や動画を公開できる充実したマルチメディア機能も備わっており、00年代にはMySpaceがきっかけとなってブレイクしたアーティストも少なからず登場しました。

総じて『MySpace』はアーティストの囲い込みを重視していたSNSだったと言え、ファンにとってはアーティストと繋がりやすい場所でもあったでしょう。

しかし、残念ながらMySpaceの音楽機能が日本でも、海外と同様に受け入れられたかと言えばやや疑問も残ります。『MySpace』日本版の音楽コンテンツは、2009年~2010年ごろになるとトップページに有名アーティストを主に取り上げた音楽ニュースや最新曲の試聴などがかなり目立つようになってしまった感も否めないためです。

音楽機能について1
(画像は「Wayback Machine(2010年当時のMySpace日本版)」より引用)

「音楽サービスなのか、SNSなのか」の分かりづらさが、『MySpace』日本版の舵取りを難しいものにしてしまったと言えるのではないでしょうか。

実際にはSNSとして双方向のコミュニケーションが可能なプラットフォームでありながら、一方的にアーティストの曲を受け取る場所のように映った人も少なくなかったのではないでしょうか。

『MySpace』日本版が撤退した理由は?直面した主要競合サービスについて

00年代にMySpaceが日本市場で直面した、SNSとして最大の競合はmixiでした。mixiは招待制コミュニティと匿名文化を重視し、日記機能や「足跡」機能など日本独自のコミュニケーション文化に最適化されていました。

『MySpace』日本版が撤退した理由は?直面した主要競合サービスについて1
(画像は「mixi」公式サイトより引用)

たとえば、当時、招待制のmixiは月間PV数約69億を記録していた一方、オープンなはずのMySpaceは5,900万。大きく差があったというデータもあります。

『MySpace』日本版は実名制とオープンプロフィールを前提とした米国式モデルを基本的には踏襲していましたが、匿名×招待制のSNSが浸透していた00年代の日本では強くミスマッチを起こしていた感が否めません。

またmixiの「日記」に触れる頻度で、MySpace日本版でユーザーがアーティストの楽曲など「マルチメディア機能」に触れていたかも疑問が残るところです。

2025年現在のようにモバイル通信が高速ではなく、使い放題プランも少ない中では『MySpace』でマルチメディア機能を楽しむユーザーはPCに限定されてしまいがちな側面が強かったでしょう。

モバゲータウンとGREEについて

2000年代当時、mixiと並んで台頭したSNSには『モバゲータウン』や『GREE』も挙げられます。

モバゲータウンとGREEについて1
(画像は「モバゲー」公式サイトより引用)

これらのサービスの売りは、携帯電話で簡単にプレイできる軽量な「ゲーム」でした。

2000年代後半といえば、日本では『iPhone』はまだ登場したばかり。多くのユーザーはガラケーを使い続けていた時代です。

とはいえ『iモード』『EZweb』など携帯電話向けIP接続サービスはすでに完全に定着しており、モバイル対応はSNSサービスにとって極めて重要でした。そしてGREEとモバゲータウンはアバター機能やアイテム課金システムで10代~20代ユーザーを獲得し、モバイルコミュニティを構築しました。

一方、MySpaceは日本国内向けに最適化した携帯電話版サービスの提供が遅れ、ユーザーの獲得機会を大きく逃してしまいました。

総じて、結果的に『MySpace』日本版は2011年末には早々の撤退が報じられることとなります。

「アーティストと繋がれるSNS」の先見性

MySpaceの最大の失敗は、あくまで00年代当時の日本向けSNSとして見れば「音楽特化型の戦略に固執しすぎた」ことだと言えるでしょう。

アーティストの囲い込みを強化して配信機能などを展開したものの、mixiやGREEなどを競合サービスとして位置づけるなら「一般ユーザー向けの日常的なコミュニケーション機能」が貧弱でした。

一方で『MySpace』の「アーティストと繋がれるSNS」としての一面には、先見性がなかったわけではありません。

アーティストとファンの双方向のコミュニケーションや、ファンからの直接的な支援の動きは10年代~20年代に『クラウドファンディング』『クリエイター支援サイト(例:Patreon)』『ライブ配信サービスにおける投げ銭』などさまざまな形で急拡大しました。

また仮に2025年現在に『MySpace』が存在していたならば、「推し活プラットフォーム」としても一般ユーザーに受け入れられた可能性もあるでしょう。

00年代当時にはどこか中途半端さが否めなかった『MySpace』が持っていた先見の明は、クラウドファンディングや推し活が定着した2025年の視点から見ると、今なお色あせていないかもしれません。

※サムネイル画像は(Image:​「Wayback Machine(2009年当時のMySpace日本版)」より引用)

スマホライフPLUS編集部

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