MIXIが、2024年12月16日に発表した新しいSNS「mixi2」。かつてのmixiを踏襲した「招待制」「コミュニティ機能」などが大きな特徴でありつつ、X(Twitter)に近しいタイムラインが導入されていることも話題になりました。
なお、「mixi2」は従来のmixiとは別物と位置づけられており、昔ながらのmixiも引き続き運営されています。そこで今回は、あえて従来のmixiに焦点を当て「mixiはいつ、そして何が理由でSNSとして衰退したのか」を振り返っていきましょう。
mixiの衰退は「2010年代前半~」
従来のmixiがサービスを開始したのは2004年。mixi2がスタートした2024年は、従来のmixiにとっては20周年のアニバーサリーでもあります。そしてmixiの衰退が顕著になり始めたのは「2010年代前半~」です。
たとえば2010年代前半には成長のかげりが指摘され、同社の身売り報道が取り沙汰されるなど様々な問題が噴出。2011年末にはネット視聴率調査で、mixiへの訪問者数が急減したように見える騒動もメディアで報じられました。
SNSとしてのmixiは何が理由で衰退した?
mixiが2010年代に衰退を始めた理由には「リアルグラフ」を過剰に重視した運営方針への切り替えや、「足あとの廃止」に代表される機能変更へのユーザーからの反発の大きさなどが挙げられます。具体的に見ていきましょう。
「足あと」の廃止など機能変更へのユーザーからの反発の大きさ
mixiは2010年代に入ると、相次いで機能変更が行われるようになりました。その象徴的な一例が、2011年に行われた足あと機能の廃止です。足あとはmixi初期からの特徴的な機能であり、機能に対して肯定的なユーザーと否定的なユーザーが極端に分かれる傾向が多いものでした。
肯定的なユーザーからは「自分が書いた日記がどのマイミクに読まれているか足あとで確認できることが、日記を書くモチベーションになる」といった声がありました。一方で否定的なユーザーからは「足あとをチェックするのはストーカーのようで気持ちが悪い」といった声が少なからず上がってもいました。
そのため足あとの廃止は度々議論にもなり、mixiボイスに代表される「足あとを付けずにコミュニケーションできる機能」もサービス内に実装されるようになりました。
しかし実際に2011年6月に「足あと」機能が廃止されると、mixi内の足あと機能廃止への反対を訴えるコミュニティに26万人が参加。反対を訴える1万7000人分の署名が集まり、ミクシィへの陳情も行われました。
この足あと機能の廃止「だけ」がユーザーからの反発を受けたわけではありません。
・07年10月:デザインリニューアル
・08年3月:利用規約改定
・09年3月:コミュニティの大量削除
など、2010年頃のmixiでは各種改定のたびに「炎上」が発生する状態でした。運営サイドの方針とユーザーが期待することの間にある断絶が極めて大きなものになってしまっていた可能性が高いです。
「リアルグラフ」を過剰に重視した方針への切り替え
「運営サイドの方針」と「ユーザーが期待すること」の断絶という点では、mixiの運営方針の転換も大きな点だと言えるでしょう。
その大きな方針が「リアルグラフ」を重視する方向性へのシフトです。足あと機能を廃止した2011年~2012年頃のmixiは、画面のリニューアルにも着手。具体的には画面上で「コミュニティ」を目立たない位置に移動し、代わりに友人のコミュニティを目立つ位置に変更。
そしてTwitter(現:X)を「ニュースグラフ」、Facebookを「パブリックグラフ」と呼称したうえで、mixiを「リアルグラフ」と位置づけました。TwitterやFacebookに比べ、親しい友人間(数十人程度)でのやり取りを重視する方向性を掲げました。
このように明確にリアルグラフを重視する方向性に舵を切ると「ハンドルネームが使えること」「Facebookに比べると匿名性が高く、ゆるくコミュニティで他のユーザーと繋がれること」を魅力と捉え、mixiを利用していたユーザーの離反を招くこととなります。
そして親しい友人間での繋がりを重視すると、実名で登録するのが基本で、出身大学や所属企業まで明らかになりやすいFacebookとの差分が小さくなります。
つまりmixiはSNSとしての位置づけや機能を見直すたびに、強みを失い、2010年代の頭から半ば頃にかけ急速に存在感を失ったと言えるでしょう。
広告サービスが想定よりも大きく育たなかった可能性も
2012年時点で、mixiの広告収入はすでに減少傾向に転じており、その穴を埋める形で「mixiゲーム」のアイテム課金が主要な収益源となる構造が生まれていました。
このことからうかがえるのは、00年代に期待されたほどには、mixiの広告サービスが「大きく成長しなかった」可能性がある点です。
たとえば、2006年に同社がマザーズに上場した際には、「mixiの主な収益源は、このページビューに支えられたmixi内の広告枠販売である」「mixiの事業はバナー広告の販売が好調だった」と報じられています。当時は、トップページなど目立つ場所の広告枠を、雑誌や駅の広告と同様に販売する形が主流だったと見られます。
一方で、今日のMeta広告に代表されるような、SNSならではのユーザー属性などに基づいた運用型広告は、当時開発が進んでいた可能性はあるものの、十分には普及しませんでした。その結果、10年代以降、mixiは収益源をmixiゲームによるアイテム課金へとシフトさせていったと考えられます。当時の国内インターネット広告業界の成熟度や市場規模を踏まえると、広告依存型で巨大なサービスを運営するのは困難であり、ゲーム事業に舵を切る必要があったと言えるでしょう。
こうした背景を踏まえると、現在のように広告業界が成熟した状況で、同社が「mixi2」をリリースしたことは、非常に興味深い判断だと言えるのではないでしょうか。
MIXI社の新たなSNS展開について
2024年12月にリリースされたmixi2は、冒頭でも述べた通り、「招待制」や「コミュニティ機能」など、従来のmixiの特徴を引き継いでいるものの、あくまで別サービスとして立ち上げられています。
また、「有料会員」や「広告サービス」、「ソーシャルゲーム」など、マネタイズに向けた各種機能は、2024年12月時点ではまだ実装されていないようです。
仮にmixi2が引き続き大きな注目を集め、ユーザー数がさらに増大した場合には、mixi全盛期と比較して大きく成長したインターネット広告市場の市場規模の大きさも背景としたうえで「広告による収益化」が実現される可能性が高いでしょう。
なお、MIXI社は、mixi2とは別に位置情報共有アプリ「whoo」への出資も行っています。つまり同社は「whoo」「mixi2」という2つの話題性が大きなSNSに強く関与していることを意味します。同社の今後のSNS展開には目が離せません。
※サムネイル画像(Image:Shutterstock.com)※画像は一部編集部で加工しています