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ChatGPTは「共犯」か? 銃撃犯と270回超の会話でフロリダ州がOpenAI調査開始

「AIが人の命を奪う手助けをしたかもしれない」——そんなショッキングな疑惑が、いま全米を揺るがしています。2026年4月9日、フロリダ州のジェームズ・ウスマイヤー司法長官がOpenAIに対する正式な調査を開始すると発表しました。理由は「公共の安全と国家安全保障に関するリスク」。年内のIPO(新規株式公開)を目指すOpenAIにとって、これ以上ないタイミングでの逆風です。

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(画像はスマホライフPLUS編集部作成)

何が問題視されているのか?銃撃事件とChatGPTの関わり

ウスマイヤー司法長官が特に問題視しているのが、2025年4月17日に起きたフロリダ州立大学(FSU)での銃撃事件です。この事件では2人が死亡、5人が負傷しました。同長官はChatGPTが銃撃の実行犯とされる人物を「手助け(assist)した可能性がある」と指摘しました。

裁判記録によると、被疑者フェニックス・イクナーのChatGPTとのやり取りは272件の会話として証拠品にリストされています。NBC Newsが入手したメッセージには「FSUで銃撃があったら国はどう反応するか」「FSU学生会館で最も混雑する時間は何時か」といった質問が含まれていました。地元局WCTVの報道によれば、イクナーは銃撃のわずか3分前にChatGPTに「ショットガンの安全装置の外し方」を尋ね、チャットボットは詳細な手順を回答していたとされます。

銃撃事件で殺害された被害者ロバート・モラレスの遺族の代理人弁護士は、被疑者がChatGPTと「常にコミュニケーションを取っていた」と主張し、OpenAIに対する訴訟を「近く提起する」と表明しています。

さらにウスマイヤー長官は、ChatGPTが児童性的虐待コンテンツ(CSAM)に関連する犯罪行為や、自傷行為の「助長」にも関わっているとの認識を示しました。

国家安全保障の懸念「中国共産党の手に渡るリスク」

調査の柱はもう一つあります。ウスマイヤー長官は、Xに投稿した動画声明の中で、OpenAIのデータと技術が「中国共産党などアメリカの敵対勢力の手に渡る懸念がある」と明言しました。

AI技術の軍事・諜報分野への転用リスクは以前から指摘されてきましたが、州の司法長官が国家安全保障を理由にAI企業を調査するのは異例です。ウスマイヤー長官は元フロリダ州知事ロン・デサンティスの首席補佐官を務めた人物です。

ウスマイヤー長官は声明で「AIは人類を補完し、支え、前進させるために存在すべきであり、存亡の危機や究極的な破滅をもたらすためにあるのではない」と述べたうえで、「ビッグテックがこれらの技術を展開する際に、私たちの安全と安心を危険にさらすべきではない——さらせるはずもない」と強い口調で警告。関連する召喚状の発行も「近く行う」と表明しました。OpenAIはCBS Newsなどの取材に対し、「司法長官の調査に協力する」との声明を出しています。

フロリダだけの話ではない、全米で強まるAI規制の圧力

フロリダ州の動きは突発的なものではありません。AI企業を取り巻く規制の波は、ここ1年で急速に高まっています。

2025年9月には、カリフォルニア州司法長官ロブ・ボンタとデラウェア州司法長官キャシー・ジェニングスがOpenAIに対して子どもへの影響を懸念する書簡を送付しました。同年12月にはペンシルベニア州司法長官デイブ・サンデイやニュージャージー州司法長官マシュー・プラトキンらが主導し、全米42州の司法長官がOpenAI、Anthropic、Meta、Googleを含む13のAI企業に対し、子どもを有害なAIチャットボットから保護するための措置を要求する書簡を連名で送付しています。

一方で、2025年12月にはトランプ大統領がAIに関する大統領令に署名し、これを受けて2026年1月にはパム・ボンディ司法長官が州レベルのAI規制に対抗する「AI訴訟タスクフォース」を司法省内に創設しました。AI企業が「過度な規制なしに自由にイノベーションできる」環境の整備を目指すものですが、連邦政府と州政府の間で規制のあり方をめぐる綱引きが激しさを増しています。

IPO直前のOpenAI、巨額投資と膨らむ企業価値のはざまで

この調査発表は、OpenAIにとって最悪のタイミングと言えます。同社は2026年第4四半期のIPOを目指しており、2026年3月31日に完了した資金調達ラウンドでは1220億ドルを調達、企業価値は8520億ドル(約120兆円超)と評価されました。目標とする企業価値は1兆ドルとされています。

しかし、The Informationが確認した社内文書によると同社は2026年に140億ドルの損失を見込んでおり、2030年までに年間収益2800億ドルの達成を目標に掲げる「超攻めの経営」を続けています。IPO前に州レベルの調査が重なることは、投資家心理への影響を避けられないでしょう。

「AIの責任」の線引きが問われる転換点

今回のフロリダ州の調査は、AI業界全体にとって重要な分水嶺になる可能性があります。

注目すべきは、カナダでも深刻な事案が起きている点です。2026年2月10日、ブリティッシュコロンビア州タンブラーリッジで18歳のジェシー・ヴァン・ルートセラーが母親と異父弟を殺害した後、タンブラーリッジ中等学校で6人を殺害し、自ら命を絶ちました。The Wall Street Journalの報道によると、OpenAIは2025年6月に同人物のChatGPTアカウントを暴力的な内容を理由にBANしていましたが、カナダ警察への通報は行わなかったとされています。同人物はその後2つ目のアカウントを作成し、銃による暴力のシナリオについてChatGPTとやり取りを続けていたことが訴訟で主張されています。「AIが犯罪に利用された」という主張は、もはや一国の問題にとどまりません。

ただし、ここは冷静に見る必要もあります。AIが犯罪の「原因」なのか、それとも犯行を企てた人物が多くの情報源の一つとして利用したに過ぎないのか——その線引きは極めて難しい問題です。包丁メーカーに殺人の責任を問うのか、という古くからある議論と本質的には地続きでありながら、AIが双方向で「会話」する点で従来のツールとは質的に異なるとも言えます。

確実に言えるのは、連邦政府がイノベーション推進の立場を取る中で、州レベルの規制が先行して進んでいる現状は、OpenAIだけでなくAI業界全体にとって経営リスクの不透明さを増大させるということです。IPOを控えたOpenAIがこの調査にどう対応するかは、他のAI企業の規制対応の「前例」になります。2026年後半のAI業界の景色を決定づける動きとして、引き続き注視していく必要があります。

出典:AxiosNBC NewsCBS NewsTechCrunch

参考:WCTVWCTV(遺族訴訟)WFSUFlorida PhoenixCNBCBloombergThe InformationThe Motley FoolCalifornia Attorney General’s OfficeNew Jersey Attorney General’s OfficeCBS News(DOJタスクフォース)CBC NewsCourthouse News Service

スマホライフPLUS編集部

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