「転職すべきか」「この働き方でいいのか」─仕事やキャリアの悩みは尽きないものですが、いざ誰かに相談しようとすると、相手選びに困ることがあります。家族には心配をかけたくない、職場では本音を言いにくい……。そんなとき、ChatGPTやGeminiといった生成AI(文章で質問すると回答を返してくれるAIサービス)に話しかけてみる人が出てきているようです。
株式会社NEXERと株式会社RSGが共同で実施した調査から、生成AIをキャリア相談に使っている人の実態、感じているメリットと限界、そして注意すべきポイントを整理します。

キャリアの悩みをAIに相談する人はどれくらいいる?──500人調査の結果
株式会社NEXERが、建設・不動産専門の転職エージェント「株式会社RSG」と共同で「AIに相談するキャリア形成」に関するアンケートを実施しました。調査の概要は次のとおりです。
調査手法:インターネットアンケート 調査期間:2026年5月26日〜6月2日 対象:全国の男女 有効回答:500サンプル
結果を見ると、「キャリアや働き方について生成AIに相談・質問したことがある」と答えた人は8.2%。残りの91.8%は「ない」と回答しています。
生成AIの話題を目にする機会は増えていますが、キャリアの相談先として使っている人はまだ少数派というのが現状です。なお、調査結果の数値は小数点以下第2位を四捨五入して表記されているため、合計が100%にならない場合があります。
では、この少数派の人たちはAIをどう感じ、どんな行動につなげたのでしょうか。次のセクションから詳しく見ていきます。
どんな悩みをAIに打ち明けている?──転職・人間関係・将来の方向性
「AIにキャリアの相談なんて、何を聞くの?」と思うかもしれません。しかし調査の自由記述には、身近で切実な悩みが並んでいました。実際に寄せられた相談内容の一部を紹介します。
転職するべきかどうかの質問(20代・女性) 今後10年どう生きればいいか(20代・男性) 上手い仕事の進め方(20代・男性) 職場の人間関係について(30代・女性) 誰も相談できる人がいないので、AIに試しに相談してみた(30代・女性)
転職や将来の方向性といった大きなテーマから、職場の人間関係、さらには労働環境への疑問まで、非常に個人的な悩みをAIに投げかけているケースも目立ちます。
注目したいのは「誰も相談できる人がいない」という声です。家族に心配をかけたくない、職場では本音を言えない─そうした事情を抱える人にとって、生成AIは「とりあえず話してみる相手」になりつつあるようです。「誰にも言えない」と感じることでも、AIが相手であれば打ち明けやすく、一定の需要を生み出しているといえるでしょう。
キャリア相談の相手は誰が多い?──家族が1位、AIは5.6%で存在感を示し始めた
「仕事の悩みを誰かに打ち明けたいけれど、相手が見つからない」─そう感じたことはないでしょうか。今回の調査では、キャリアの悩みを相談する相手として最も多く選ばれたのは「家族・パートナー」で29.2%でした。
続く回答は次のとおりです。
その他:17.2% SNS・インターネットで調べる:14.8% 友人・知人:11.0% 職場の上司・先輩・同僚:10.6% 生成AI(ChatGPT・Claude・Geminiなど):5.6% 人材エージェント・キャリアアドバイザー:3.2% 転職サイト・求人サイトのサービス:3.0%
「SNS・インターネットで調べる」が上位に入っている点は注目に値します。「誰かに話すよりまず自分で調べたい」という層も一定数存在することがうかがえます。
生成AIを最も相談しやすい相手として挙げた人は5.6%と、まだ少数です。しかし、人材エージェントや転職サイトのサービスを上回っている点は見逃せません。生成AIをキャリア相談の窓口として最初に選ぶ人はまだ少数ですが、存在感は出てきています。
約59%が「人よりも相談しやすい」と回答─その理由と不満の声
「キャリアの悩みを誰かに話したいけれど、相手に気を使ってしまう」─そんな経験がある方は少なくないはずです。今回の調査では、生成AIにキャリア相談をしたことがある人のうち、58.5%が「人よりも相談しやすい」と回答しました。
さらに「人と同じくらい相談しやすい」が31.7%で、合わせると約9割が少なくとも人と同等以上の話しやすさを感じていることになります。一方、「人よりも相談しにくい」は7.3%、「人よりもやや相談しにくい」は2.4%にとどまりました。
では、なぜ「相談しやすい」と感じるのでしょうか。回答者の声を見ると、共通するポイントが浮かび上がります。
「感情がない相手なので反応を気にせず相談できる」(30代・女性) 「否定だけじゃなくちゃんと道を照らしてくれる」(30代・女性) 「自分がどうしたいか相談してるうちに頭が整理されやすい」(30代・女性) 「気を使うことなく心の声を吐露できる」(20代・女性)
調査全体でも「気を使わずに済む」「否定されない」「時間を問わず使える」という声が多く挙がっています。人に相談するときにつきまとう遠慮や気後れが、AIには生じないことが「話しやすさ」に直結しているようです。
ただし、良い面ばかりではありません。「どんな会話でも励ましてくれるのでやる気が出る一方、否定的なことを言わないので自信過剰に考えやすい」(50代・女性)という指摘もあり、肯定ばかりのやり取りが判断を偏らせるリスクを感じている人もいます。
「相談しにくい」と答えた人の理由も見ておきましょう。
「答えが一般的過ぎ」(50代・男性) 「返事が決まってる感がする」(60代・女性)
個人の事情に深く寄り添うことの難しさを感じている人もいるわけです。AIは「話しやすい壁打ち相手」にはなれても、自分だけの背景を踏まえた判断までは任せきれない─そう考えておくと、過度な期待や落胆を避けやすくなります。
約59%がAIのアドバイスで実際に行動──転職サイト登録・副業開始の例も
「相談して終わり」ではなく、本当に次の一歩につながるのか──これはAIをキャリア相談に使ううえで気になるポイントです。
調査では、生成AIにキャリアや働き方を相談したことがある人のうち58.5%が「アドバイスをきっかけに行動に移したことがある」と回答しました。残りの41.5%は「ない」と答えており、結果は分かれていますが、半数以上が具体的なアクションにつなげている点は見逃せません。
回答者が挙げた行動の例を見ると、内容は多岐にわたります。
転職サイトに登録した(20代・男性) アイデアが煮詰まっていた時にAIに質問し、効率的に考え方を整理してくれたおかげで解決策が見つかり、作成してくれた資料をそのまま提出した(20代・女性) 出勤時間を変更した(30代・女性) 在宅の副業を実践した(40代・男性) 書いてもらった志望動機をそのまま企業に提出した(40代・男性)
転職活動の入り口となる登録作業から、働き方そのものの見直し、さらには副業の開始まで、行動の幅が広いことがわかります。相談するだけでなく一歩踏み出すきっかけにもなっているという点は、無料で使える生成AIの実用的な一面といえるでしょう。
生成AIにキャリア相談するとき気をつけたいこと─無料で使える範囲と限界
ChatGPT・Claude・Geminiといった生成AIは、無料プランでもキャリアの悩みを投げかけることができます。ただし、今回の調査では利用者から注意すべき声もはっきり上がっています。
「答えが一般的すぎる」という不満
調査の自由記述では「答えが一般的すぎる」「返事が決まっている感じがする」という不満が報告されています。個人の事情に深く寄り添うことの難しさを感じている人もおり、AIの回答をそのまま正解と受け取るのはリスクがあります。
否定しないからこそ生まれる落とし穴
前のセクションで紹介した「否定的なことを言わないので自信過剰に考えやすい」という声は、ここでも重要です。AIは遠慮なく話せる反面、耳の痛い意見を返してくれないため、判断が偏る可能性があります。
無料で使うときの判断軸
これらの声を踏まえると、次のような使い方が現実的です。
AIの回答はあくまで「選択肢を広げるヒント」として受け取る 具体的な条件(給与・契約・法律)に関わる判断は、AIだけで完結させない
調査元のまとめでも、生成AIの活用は「キャリアの選択肢を広げるヒントを得る手段」として位置づけられています。追加費用をかけなくても生成AIは相談の入り口になりますが、回答の一般性と「否定しない」特性を知ったうえで使うことが大切です。
まとめ─AIは「悩みの整理役」として試す価値がある
株式会社NEXERと株式会社RSGの共同調査から見えてきたポイントを整理します。
キャリアや働き方について生成AIに相談した経験がある人は全体の8.2%と、まだ少数派 ただし実際に相談した人の58.5%が「人より話しやすい」と感じている さらに58.5%が、相談をきっかけに行動を起こしている
「気を使わなくていい」「いつでも使える」という特性は、悩みを抱え込みがちな人にとって大きな入り口となりうるでしょう。
生成AI(ChatGPTやGeminiなど)は無料プランでも利用できるものがあります。「転職すべきか迷っている」「今の働き方をこのまま続けていいのか不安」─そんなモヤモヤを感じたら、まずは試しにAIへ話しかけてみるのも一つの手です。答えをそのまま鵜呑みにするのではなく、自分の考えを整理する相手として使うことで、次の一歩が見えやすくなるかもしれません。



