「最近、家族や友達には何となく相談しづらいことを、ChatGPTに打ち明けてしまった」──そんな経験、ありませんか。実はいま、こうした行動が静かに広がりつつあるのが、50代・60代の世代です。
株式会社BEYOND AGEが2026年5月21日に発表した調査によると、全国の50〜69歳の男女602名のうち、約4割が「生成AIにしか話していない秘密がある」と回答。さらに、相談後の約7割が「安心した」「スッキリした」とポジティブな変化を実感しているといいます。”シニア層はAIに疎い”というイメージは、少なくともAIを使い始めた層においては、もはや過去のものになりつつあるのです。

月に数回以上、6割超が利用──思った以上に”普通”になっていた
まず驚かされるのは、利用頻度の高さです。50〜69歳のうち「月に数回以上」生成AIを使っている人は64.3%にのぼり、なかでも「ほぼ毎日」が22.6%、「週に数回」が24.4%を占めました。
ただし注意したいのは、この数字は生成AIにある程度触れているシニア層の実態を映したものである可能性が高い、という点です。他社調査(日本リサーチセンター2025年6月調査など)では、60代の生成AI利用経験率は1〜2割程度にとどまっており、シニア全体に一気に普及したというよりは、「使い始めたシニアが、想像以上にヘビーに使い込んでいる」と読むのが妥当でしょう。
ChatGPTが世に出てまだ約3年半。「シニア層には難しいのでは」という先入観に反して、スマホ世代のシニアたちのうち、いったん使い始めた層は想像以上にAIを”使いこなしている”状況です。一方で「ほとんど使わない」も35.7%と一定数おり、利用層と非利用層がくっきり二極化しはじめている段階ともいえます。
つまり、いまこのタイミングは「使い始めた人」と「これから使う人」の差が決定的に開いていく分岐点。早く慣れた人ほど、AIを”生活の相談相手”として使いこなす段階に入っているのです。
相談ジャンルTOP3は「一般常識」「健康」「お金」
では、シニアたちは具体的に何をAIに聞いているのでしょうか。調査では「人には聞けず、AIにだけ聞いたジャンル」のトップ3が浮かび上がりました。
1. 一般常識・言葉の意味・マナー(41.1%)
2.健康・体の悩み(加齢・更年期等)(40.6%)
3.お金・年金・資産運用・借金・相続(37.7%)
いずれも”今さら誰かに聞くのは恥ずかしい”領域ばかりです。「この敬語の使い方、合っているのかな」「最近めまいがするけど、病院に行くほどでもないし……」「NISAって結局どう始めるんだっけ」──そんな”検索しても腹落ちしない疑問”を、AIなら何度でも、自分のレベルに合わせて噛み砕いて答えてくれます。
さらに注目すべきは、メンタル(25.6%)、夫婦関係(8.3%)、介護(8.8%)、終活(8.8%)といった、長らく”タブー”とされてきた領域もランクインしている点です。”墓の話”や”夫への不満”を、AIになら打ち明けられる──そんな時代に、私たちはすでに突入しているのです。
男性は「お金」、女性は「健康・心」──性別で割れる相談の中身
興味深いのは、相談ジャンルが性別でくっきり分かれていることです。
・男性のトップ:お金・年金(45.5%)→ 一般常識(41.5%)→ 健康(35.7%)
・女性のトップ:健康(47.2%)→ 一般常識(40.5%)→ 心の不調(32.5%)
男性は資産や年金といった”数字で答えが出る悩み”を、女性は身体やメンタルといった”感情を含む悩み”をAIに持ち込む傾向が顕著です。とくに女性の3人に1人が「心の不調」をAIに相談している点は見逃せません。
なぜ「人」より「AI」?──”気まずさ”を回避できる第三の相談先
最大の論点は、なぜシニアたちが家族や友人ではなく、AIを選んでいるのかという点です。調査で示された理由のトップは以下の通り。
・「専門家(医師・弁護士など)に行くほどではない」32.6%
・「相談料やお金をかけたくない」28.4%
・「身近に本音を話せる相手がいない」27.6%
・「恥ずかしくて人には言えない」22.5%
・「説教や否定をされたくない」12.4%
ここから見えてくるのは、AIが「専門相談」と「雑談」の中間地帯を埋めているという構造です。医師や弁護士に行くほどではない、でも家族には話しにくい──その絶妙なグレーゾーンの悩みを、AIが受け止めている。
そして、AIに対する感情として最も多かったのは「機械相手なので気楽」(50.9%)、続いて「否定されないので安心できる」(29.2%)。つまり、”判定されない安心感”こそが、シニアにとってAIを相談相手に選ぶ決定的な理由なのです。
VS構造で読み解く:AI相談の「光」と「影」
このトレンドは手放しで歓迎できるのでしょうか。メリットとデメリットを冷静に整理してみます。
AI相談の強み
・24時間いつでも、無料で利用できる
・否定や説教をされない心理的安全性
・専門用語をかみ砕いて何度でも説明してもらえる
・誰にも知られず吐き出せる”秘密の場”になる
AI相談の弱点
・医療・法律・金融の重大事項では誤回答(ハルシネーション)のリスク
・共感はしてくれても、本質的な感情の支えにはなりにくい
・「頼りすぎている気がして不安」と感じる人も10.1%存在
・依存が進めば、人との関係構築の機会を失う可能性
実際、調査でも「かえってモヤモヤが残った」という回答が6.7%あり、AIの回答品質や感情面への配慮が、継続利用のカギを握ることが示されました。
編集部の見解:これは”代替”ではなく”補完”──ただし使い方が運命を分ける
注目すべきは、「AIが普及しても人への相談頻度は変わらない」が70.8%だったという結果です。AIは家族や友人を”奪っている”のではなく、これまで誰にも吐き出せなかった悩みの新しい受け皿になっている。むしろ「AIで整理してから人に相談する」(6.5%)という”橋渡し”の使い方も生まれています。
ただし、危うさもあります。約4割が「誰にも話していない(AIだけが知っている)」と答えた事実は、見方を変えれば「AIだけが本音の聞き役になっている人が4割いる」ということ。これは社会としての孤独問題の表面化でもあります。
スマホライフPLUS編集部としての見解は明確です。AIは”特効薬”ではなく、”応急処置”として活用すべき。健康の不安はAIに聞いてから医師へ、お金の悩みはAIで基礎知識を整理してからFPへ、というように、AIを”入口”として使い、最終判断は人や専門家に委ねる。この使い分けこそが、AI時代の賢い付き合い方ではないでしょうか。
まずは”小さな悩み”から始めてみる
もし読者の親世代や、自分自身が「AIってちょっと怖い」と感じているなら、まずは健康や言葉の意味といった正解のある軽い質問から始めてみるのがおすすめです。慣れてきたら、もう少し踏み込んだ悩みをぶつけてみる。AIは黙って聞いてくれるし、何度同じ質問をしても怒りません。
「人に話せない秘密を、AIだけは知っている」──これが当たり前になる時代は、もう始まっています。大切なのは、その関係を孤独の隠れ蓑にするか、より良い人生のための踏み台にするか。選ぶのは私たち自身です。
出典:株式会社BEYOND AGE
参考:株式会社BEYOND AGE 公式サイト、日本リサーチセンター、ハルメクホールディングス


