当選直後に訪れる“歪んだ成功体験”の正体
SNSで投稿されたたった二行のつぶやきが、驚くほど多くの共感を呼んでいる。
発信者はAIイラストや雑記を投稿しているシトラス(柑橘系)(@AI_Illust_000)さん。
Switchの次世代機「Switch 2」に当選した際の感情を端的に表した内容だ。

『私が本当に欲しかったのはSwitch2じゃなかった多くの人が落選する中、自分だけが当選する歪んだ成功体験だったんだ』
注目すべきは、商品を手に入れたことそのものではなく、自分が「選ばれた」側にいるという感覚である。抽選に当たった瞬間、自身の中にあった本当の欲望の形に気づいたという視点が、鋭く、多くの人の胸に刺さった。
手にしたモノより“当選した自分”への執着
Switch 2のような人気商品の抽選に当選すれば、多くの人が喜びを感じるのは当然だ。
だが、シトラス(柑橘系)(@AI_Illust_000)さんのように、その喜びの内側にある感情を見つめ直すと、「本当に欲しかったのは商品ではなく、“競争に勝った自分”だったのでは」と気づく場合がある。
心理学では、こうした構造は「相対的満足感」と呼ばれる。他者と比較したうえでの優越感、または自分が特別扱いされたという感覚が、快感の源となる現象だ。
実際、SNS上ではこの投稿に対して、「めっちゃわかる」「当たったときが一番嬉しい」「届いたら意外と冷めている」といった反応が寄せられた。
本質的には、モノを手に入れる行為よりも、“自分だけが選ばれた”という構図にこそ強く惹かれていたということに、多くの人が共感を示している。
抽選や限定販売は、消費行動に「希少性」や「競争性」を付加することで、購入そのものに物語性を生み出している。
ただ、それに付随する高揚感が実際の所有や使用と結びついていない場合、満足感は長続きせず、「手に入れたのに空しい」という現象が起こりやすくなる。
抽選に勝つことが“目的化”する罠
シトラス(柑橘系)(@AI_Illust_000)さんが言及した「歪んだ成功体験」という言葉は、現代の消費スタイルをよく表している。
多くの人が競り合う中、自分だけが選ばれた。その構造に酔ってしまい、何を得たのかではなく、どう得たのかが満足感の中心となる。
このような傾向は、ゲーム機や限定グッズに限らず、ライブチケット、福袋、コラボアイテムなど、抽選制を導入したあらゆる商品で見られる。
「手に入れること」が目的化し、その過程が終わると興味が薄れてしまう。
いわば、結果ではなくレースの中にいたことそのものが快感だったのだ。
さらにSNS時代では、当選報告をシェアすることで一種の“優越感の共有”が生まれる。
その反応を期待してエントリーするケースもあり、「当選→自慢→称賛→飽きる」というサイクルに無自覚なまま巻き込まれていることもある。
シトラス(柑橘系)(@AI_Illust_000)さんの投稿は、そうした循環の中でふと立ち止まり、「本当に欲しかったのは何だったのか」と自問する視点を与えてくれる。
その冷静さが、多くの共感を呼んだ理由のひとつである。
欲望の正体に気づいたとき、消費は変わる
Switch 2を手に入れたはずなのに、手元にあることに対する喜びが薄れている。
それはけっして矛盾でも失敗でもなく、現代の消費が「体験」「勝者意識」「周囲との差分」に依存していることを示している。
この投稿が価値を持つのは、「欲しい」と思った気持ちに素直だった過去の自分を否定せず、それでも今の自分が見えている“ズレ”を認めている点だ。
感情は変化する。欲望もまた、その場その場で形を変える。
そこに自覚的でいられるかどうかが、SNS社会での購買や行動の選択をより丁寧にしてくれる鍵となる。
多くの人が「当選したい」と願うとき、自分もその列に加わる。
だが、実際に当たった瞬間、他人が落ちた事実が無意識に喜びの一部になってしまっていないか。
そうした感情が浮かび上がったとき、自分の中の“欲しがっていたモノ”が何だったか、初めて明らかになる。
シトラス(柑橘系)(@AI_Illust_000)さんのつぶやきは、そうした心の奥にある層をそっと照らし出すような投稿だった。
私が本当に欲しかったのはSwitch2じゃなかった
— シトラス(柑橘系) (@AI_Illust_000) June 24, 2025
多くの人が落選する中、自分だけが当選する歪んだ成功体験だったんだ
※サムネイル画像(Image:JFontan / Shutterstock.com)