「生成AI(文章や画像などを自動で作れるAI)は、一部の専門家だけの話」——そう感じている方も多いかもしれません。しかし、最近公表された調査結果を見ると、AIの活用はすでに働き方全体に影響を与え始めていることがわかります。
株式会社サーキュレーションは、2025年12月〜2026年1月にかけて「プロ人材実態調査」を実施しました。対象は、フリーランス・副業・起業で働く個人500名です。
この調査で明らかになったのは、第一線で活躍する外部のプロほど、生成AIを積極的に業務へ取り入れているという実態です。
副業やフリーランスといった働き方は、もはや若い世代だけのものではありません。定年後のセカンドキャリアや、経験を活かした業務委託など、幅広い年代に関わるテーマです。「自分には関係ない」と思っていた生成AIが、実は仕事の評価や受注に影響し始めているとしたら——。この調査の中身を、もう少し詳しく見ていきましょう。

仕事で活躍する人ほどAIを活用?調査で分かった利用率の差
「生成AIを使っている人と使っていない人で、どれくらい差が出ているのか?」——こうした疑問に対して、ひとつの調査データが参考になります。
調査によると、「1年以内に特定の業務を受けた」プロ人材(実際に案件を受注して活動している層)のうち、39.2%が生成AIを「日常的に活用している」または「活用範囲を広げている」と回答しました。
一方で、特定業務を1年以内に受託していない「非稼働層」のAI活用率は24.1%にとどまっています。さらに、本業専従層・その他では19.8%という結果でした。
該当プロ人材と非稼働層の差:約15ポイント 該当プロ人材と本業専従層・その他の差:約20ポイント
つまり、現役で仕事を獲得し続けている層ほど、生成AIを業務に取り入れている割合が高いということです。
この差は「AIを使うから仕事が取れる」のか、「仕事をしているからAIに触れる機会が多い」のか、因果関係までは断定できません。ただ、活躍している層とそうでない層の間に、AIの活用状況で無視できない開きがあるという事実は押さえておきたいポイントです。
自分の仕事や暮らしに生成AIがどう関わってくるのか、まずはこうした数字の差を知っておくことが判断の出発点になります。
「AI活用は必須」と考えるプロが4割超——スキルがないと市場価値は下がる?
「生成AIを使えないと、仕事で選ばれなくなるのでは?」——そんな不安を裏づけるような調査結果が出ています。
生成AIスキルが市場価値に与える影響について、現役で業務を受託しているプロ人材の42.8%が「市場価値を維持・向上させるための必須条件」と回答しました。これは、直近1年間に業務を受けていない「非稼働層」と比べて14.9ポイント高い数字です。
つまり、実際に仕事を獲得し続けている人ほど、「AIスキルがなければ自分の価値が下がる」と感じている割合が高いということです。
特にフリーランスや起業家においてその傾向が強い AIを使いこなせないことが競争力の損失につながるという危機感がうかがえる
この結果は、AIスキルの有無が「選ばれるかどうか」を左右し始めている現状を示しています。自分の仕事や働き方にAIがどう関わるのか、一度立ち止まって考えてみる価値はありそうです。
AIだけが全てじゃない?「専門性こそ重要」という意見も
「AIを使えなければ仕事がなくなるのでは」と不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、同じ調査の中には別の見方も示されています。
AIスキルと市場価値の関係について、回答者の中には次のような意見もありました。
「生成AIスキルよりも本質的な専門性が重要」——19.1% 「いずれ前提条件となり差別化要因ではなくなる」——15.5%
つまり、AIスキルだけに注目するのではなく、自分が持つ専門知識や経験そのものの価値を重視する層が一定数いるということです。
また、これらの回答からは、AIをすでに外部のプロとして備えるべき標準的なスキルと捉えている層が存在することもうかがえます。AIは「特別な武器」から「持っていて当たり前のもの」へと位置づけが変わりつつある、という見方です。
AI活用が注目される場面では、どうしても「使えないと取り残される」という焦りが先行しがちです。ただ、調査結果を見る限り、AIスキル一辺倒ではなく、本来の専門性とのバランスをどう取るかが判断のポイントになりそうです。
AIで生まれた時間をどう使う?差がつく「次の行動」とは
生成AIを使えば、日々の作業が短縮されて時間に余裕が生まれます。しかし、その「浮いた時間」をどう使うかで、今後の働き方に大きな差がつく可能性があります。
調査によると、該当するプロ人材が生成AIの活用で生まれた時間的余裕をどう使っているかについて、次のような結果が出ています。
41.9%が「より付加価値の高い業務(戦略立案・企画検討など)へのシフト」を選択 40.9%が「新しいスキルや知識の習得」を選択し、このスコアは他のグループより10ポイント以上高い結果に
つまり、AIで空いた時間を「ただ楽になった」で終わらせるのではなく、自分の専門性を磨いたり、より考える力が求められる仕事に振り向けたりしている人が多いということです。
高い専門性を持つプロほど、AIが生み出す余白を自己研鑽(自分のスキルを高める取り組み)と付加価値の向上に充てている傾向が見て取れます。AIはあくまで時間を生み出す道具であり、その先の行動こそが自分の価値を左右するといえそうです。
まとめ:生成AIとの距離感をどう考えればいい?
株式会社サーキュレーションの調査から見えてきたのは、生成AIが単なる効率化ツールにとどまらないという現実です。調査結果からは、生成AIが専門性を進化させる推進力として位置づけられつつあることがわかりました。
さらに注目したいのは、AIによって生まれた時間の使い方です。調査では「高付加価値業務へのシフト」や「新たなスキルの習得」に再配分している実態が明らかになっています。つまり、AIで浮いた時間をただ休むのではなく、人間にしかできない判断や学びに振り向けている人が多いということです。
「自分には関係ない」と感じるかもしれません。しかし、働き方や情報の扱い方が変わるなかで、AIとの距離感を一度考えてみることは、今後の暮らしの安心にもつながるはずです。まずは今回の調査結果を、自分の働き方や日常に照らし合わせてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考:PR TIMES(プロシェアリング白書2025)、マイナビニュース、株式会社サーキュレーション(社内生成AI活用に関するリリース)



