「退職した社員が、うちのお客さんに連絡を取っているらしい」──こうした相談が企業から探偵事務所に寄せられるケースが増えているといいます。円満に送り出したはずの元社員が、退職後に顧客情報を使って営業活動をしていた、という話は決して他人事ではありません。
企業調査を手がけるRESTART探偵事務所(株式会社Phoenix and Co運営)は、退職後の競業行為(元の勤務先と競合する事業活動)や顧客流出に関する調査依頼が増加傾向にあると報告しています。同事務所は2026年5月27日、この問題に関する分析レポートを公開したとしています。
この記事では、同レポートの内容をもとに、どのようなトラブルが増えているのか、情報の持ち出しリスクにどう向き合えばよいのかを整理していきます。

約500件の法人相談を分析した調査レポートとは?
今回の情報がどのようなデータに基づいているのかを押さえておきましょう。同事務所が示す調査の概要は次のとおりです。
対象期間:2023年〜2025年 対象件数:約500件の法人相談および企業調査事例 調査方法:RESTART探偵事務所に寄せられた相談内容および調査結果の分析
レポートでは、競業・顧客流出に関する相談の傾向や、近年増えているケースが整理されているとされています。ただし、このデータは「一つの探偵事務所に寄せられた相談」をもとにしている点には注意が必要です。日本全体の統計ではなく、相談が集まりやすい特定の業種や規模に偏りがある可能性も考えられます。
どんな相談が増えている? 退職後トラブル4つのパターン
「円満に送り出したはずなのに、気づいたらお客様が離れていた」といった事態はなぜ起きるのでしょうか。RESTART探偵事務所のレポートによると、近年増加している相談は大きく4つのパターンに分けられるとしています。
退職後の既存顧客への営業接触 辞めた社員が、以前担当していた顧客に直接連絡を取り、自身の新しいサービスへ誘導するケースです。
在職中からの独立準備 まだ会社に在籍している段階で、退職後のビジネスを水面下で進めているパターンです。
SNSを利用した営業活動 個人のSNSアカウントを使って顧客と接触するため、会社側からは動きが把握しにくいのが特徴です。
顧客情報や営業資料の持ち出し 顧客リストや提案書など、社内の情報資産が退職時に外部へ流出するケースです。
レポートでは、これらに関する相談が増加していると報告されています。もし職場で「最近、退職者のあとに顧客が減った」「元社員のSNSで似たサービスを見かけた」といった変化があれば、同様の状況が起きている可能性も考えられます。
なぜ発覚しにくい? SNS・オンラインツールの普及が背景に
「退職した社員が何をしているか分からない」という不安を抱える企業が増えている背景には、働き方の変化があります。
レポートでは、副業・独立・SNS営業が一般的になったことで、従来よりも顧客への接触や競業活動の実態が見えづらくなっていると指摘されています。さらに、SNSやオンライン営業ツール(チャットやビデオ会議など)の普及により、顧客と接触した痕跡が残りにくくなっているケースもあるとされています。
以前であれば対面での訪問や会社の電話記録などから把握できた動きが、オンライン上の個人的なやり取りに置き換わることで、企業側が確認しにくくなっているというわけです。こうした環境の変化が、問題の発覚を遅らせる一因になっていると考えられます。
自分の個人情報は大丈夫? 顧客の立場から見たリスク
ここまでの話は、主に企業が「辞めた社員の行動」を調べるという視点でした。しかし、私たちは日常的にさまざまな企業やサービスに自分の名前や連絡先といった個人情報を預けています。
今回のレポートで相談が増えているとされる「退職後の既存顧客への営業接触」や「顧客情報や営業資料の持ち出し」といったケースは、情報を預けている側にとっても無関係ではありません。例えば、自分が利用しているサービスの担当者が退職し、その人が顧客情報を持ち出していた場合、知らないうちに別の会社から連絡が来るといった可能性も考えられます。
ただし、今回のレポートは企業向けの調査事例をまとめたものであり、個人が取れる具体的な対処法について記載されているわけではありません。そのため、「こうすれば防げる」と断定できる情報が示されているわけではない点も知っておく必要があります。
結局、どうすればいい? 今日から意識できるポイント
今回取り上げたレポートは、企業の法人相談データをもとにした分析であり、個人が今すぐ行うべき具体的な手順は示されていません。
しかし、ここから読み取れるのは「退職にともなう顧客情報の持ち出し」や「SNSを通じた営業接触」といった情報流出のパターンが、実際に問題になっているという指摘です。これは企業だけの話ではなく、自分の個人情報がどう扱われているかに関わるテーマでもあります。
この点を踏まえ、次のような視点を頭に入れておくとよいでしょう。
自分が利用しているサービスや取引先で、担当者の退職後に不審な連絡が届いていないか注意を払う SNS経由で届く営業メッセージが、以前の取引関係に由来していないか意識する こうした情報流出のリスクがあるという傾向を知っておくこと自体が、いざというときの判断の助けになります
より詳しい調査データに関心がある場合は、株式会社Phoenix and Coが公開しているプレスリリースで詳細を確認できます。


